「転職すれば年収は上がるのか」——この問いに、直近の数字はひとつの目安を示しています。リクルートエージェントの集計では、2026年4〜6月期に前職より賃金が1割以上増えた転職決定者は45.6%でした。おおよそ2人に1人です。この記事では、この数値の正しい読み方と、似た別調査との違い、そして自分の転職で賃金を上げるためのチェックポイントを整理します。
「賃金1割以上増加45.6%」が示す転職市場の現在地
まず結論から言うと、2026年4〜6月期に賃金が1割以上増えた転職決定者は45.6%でした。インディードリクルートパートナーズが運営する「リクルートエージェント」の転職決定者データに基づく集計です(出典:リクルート「2026年4-6月期 転職時の賃金変動状況」)。
この「1割以上増加」という区切りが重要です。数%の増加ではなく、明確に手取り実感が変わる水準の上昇を、45.6%の人が実現しているということになります。
- 賃金が1割以上増えた転職決定者は45.6%(2026年4〜6月期)
- 集計対象は転職支援サービス「リクルートエージェント」の利用者
- あくまで「転職が決まった人」の中での割合である
「決定者ベース」であることの意味
この45.6%は、転職を検討したすべての人ではなく、実際に転職が決まった人の中での割合です。つまり「転職しようと思えば誰でも45.6%の確率で1割増える」わけではありません。
転職活動を始めた人が全員内定にたどり着くわけではないため、この数字は「転職を決めた人たちの結果」として受け止めるのが正確です。母集団の性質を押さえておくと、数値を過大にも過小にも解釈せずに済みます。
集計方法が2025年から変わっている点
リクルートは2025年7〜9月期の集計から、基準年(2024年度)の分布をもとに算出した15パーセンタイル値・85パーセンタイル値を閾値として、外れ値を除外する処理を導入しています(出典:同レポート)。
極端に高い・低い値を除いた集計に変わっているため、以前の数値とそのまま比較するのは避けたほうが無難です。定点観測データを見るときは、集計方法の変更履歴も合わせて確認すると誤読を防げます。
「年収アップ64.1%」とは別物——数字を混同しない
転職の賃金に関する調査は複数あり、数字が独り歩きしやすい分野です。ここで注意したいのが、「賃金1割以上増加45.6%」と「年収アップ64.1%」は別の調査・別の定義だという点です。
「年収アップした人は64.1%、平均109万円増」といった数値も転職市場ではよく引用されますが、これは母集団も指標の定義も異なります。片方だけを見て「転職すれば6割以上上がる」と早合点すると、期待値を見誤ります。
「1割以上増加」と「年収アップ」の違い
両者の違いを整理すると、次のようになります。
- 「1割以上増加」は、増加幅が1割を超えた人に絞った割合。わずかな増加は含まない
- 「年収アップ」は、1円でも増えれば該当する定義が多く、そのぶん割合は高く出やすい
- 集計期間・対象サービス・母集団もそれぞれ異なる
つまり45.6%と64.1%は、どちらが正しいという話ではなく、測っているものが違うのです。要するに「明確に上がった人」を見たいなら1割以上の指標、「上がった人が多数派か」を見たいなら年収アップの指標、と使い分けるのが実務的です。
賃金データに含まれる「見えない差」
もうひとつ知っておきたいのが、比較のクセです。このレポートでは、前職の賃金には時間外労働などの変動する割増賃金が含まれる一方、転職後の賃金には含まれていません(出典:同レポート)。
転職で賃金を上げた側に入るためにできること
数値を眺めるだけでなく、自分が「1割以上増加」の側に入るために何ができるかを考えます。以下は調査結果そのものではなく、転職市場の一般的な傾向を踏まえた行動の整理です。
- 現職の賃金構成(基本給・残業代・賞与)を分解して把握する
- 提示年収を「額面」と「固定残業代の有無」まで確認する
- 市場価値を測るため複数社・複数エージェントで比較する
- スキルの棚卸しで「上げ幅を主張できる根拠」を用意する
賃金の「中身」を分解して比べる
前職の賃金に残業代が含まれ、転職後に含まれないという非対称は、個人の比較でも起こります。オファーを受け取ったら、額面総額だけでなく基本給・固定残業代・賞与の内訳まで見て、現職と同じ条件で並べ直すことが大切です。
「額面は上がったのに固定残業時間が長くなっていた」といったケースを避けるためにも、時給換算で比べる視点が役立ちます。
スキルの言語化が交渉材料になる
賃金の上げ幅は、応募先が感じる期待値と連動します。だからこそ、これまでの実績や身につけたスキルを数値と成果で語れる形に整理しておくことが、条件交渉の土台になります。
リスキリング(学び直し)で新しいスキルを加える場合も、「何ができるようになったか」を具体的な業務レベルで言語化できると、賃金の根拠として伝わりやすくなります。
この記事のまとめ
2026年4〜6月期に転職で賃金が1割以上増えた人は45.6%——およそ2人に1人という数字は、転職が賃金改善の現実的な選択肢であることを示しています。ただし、これは「転職が決まった人」の中での割合であり、集計方法や賃金の測り方にもクセがあります。
- 賃金1割以上増加は45.6%(2026年4〜6月期・リクルートエージェント集計)
- 「年収アップ64.1%」とは別の調査・別の定義。混同しない
- 前職は残業代込み・転職後は残業代抜きのため、実態はやや高めの可能性
- オファーは額面でなく賃金の内訳まで見て比較する
数字に一喜一憂するより、まずは自分の現職の賃金構成を分解し、市場でどう評価されるかを確かめるところから始めてみてください。複数のエージェントに登録して提示条件を比べるだけでも、自分の立ち位置が見えてきます。
よくある質問
「賃金1割以上増加45.6%」は誰を対象にした数字ですか?
転職支援サービス「リクルートエージェント」を利用して転職が決まった人(転職決定者)を対象にした集計です。転職を検討したすべての人ではなく、実際に転職が決まった人の中での割合である点に注意してください。
「年収アップ64.1%」という数字とは何が違うのですか?
母集団と指標の定義が異なる別の調査です。「1割以上増加」は増加幅が1割を超えた人に絞った割合、「年収アップ」は増えた人全体を指すことが多く、後者のほうが割合は高く出やすい傾向があります。どちらが正しいというより、測っている対象が違うと理解してください。
転職後の賃金は前職より低く出ているのですか?
このレポートでは、前職の賃金に時間外労働などの割増賃金が含まれる一方、転職後の賃金には含まれていません。そのため、実際の増減よりやや低めの数値になる傾向があるとされています。実態としては、数値以上に条件が改善しているケースもあり得ます。
自分の転職で賃金を上げるには何を確認すべきですか?
まず現職の賃金を基本給・残業代・賞与に分解して把握することです。オファーを受け取ったら額面総額だけでなく、固定残業代の有無や賞与を含めた内訳を確認し、現職と同じ条件に並べ直して比較すると、実質的な上げ幅を見誤りにくくなります。
この数字は今後も変わりますか?
四半期ごとに定点観測されているデータのため、市場環境によって変動します。また2025年7〜9月期から外れ値を除外する集計方法が導入されており、過去の数値と単純比較する際は集計方法の変更にも留意が必要です。
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