専門実践教育訓練給付金とは|働きながら最大80%を受け取る条件と、受講前の手続き

専門実践教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定した講座を受けると、支払った受講料の最大80%がハローワークから戻ってくる制度です。看護師や介護福祉士などの資格の養成課程、MBA、AI・データなどのIT講座が対象になります。

この給付金は、会社で働きながらでも使えます。ただし、70%・80%への上乗せを受けるには資格の取得などの条件があり、受講前の手続きにも期限があります。この記事では、在職中の人が最大80%を受け取るための条件と、受講前から支給までの手続きを、厚生労働省の資料をもとにまとめます。

この記事のポイント
  • 受講料の50%が受講中に戻り、資格を取って就職(在職中なら資格取得)すると70%、さらに賃金が5%以上上がると80%
  • 雇用保険に入っていた期間が3年以上(初めての人は2年以上)あれば、働きながらでも使える
  • 80%を受けるには、受講前と修了後の賃金を会社に証明してもらう必要がある
  • 受講開始日の2週間前までに、ハローワークで手続きをしないと受け取れない
目次

専門実践教育訓練給付金とは

専門実践教育訓練給付金は、働く人の中長期的なキャリア形成を支えるための、雇用保険の給付です。雇用保険に入っている人(在職中)や、入っていた人(離職中)が、厚生労働大臣の指定する講座を受けて修了すると、自分で支払った受講料などの一部がハローワークから支給されます。

教育訓練給付金には3つの種類があり、専門実践教育訓練給付金は、その中でいちばん給付の割合が大きいものです。

種類給付の割合(上限)対象になる講座のイメージ
専門実践教育訓練最大80%(年間64万円)国家資格の養成課程、専門職大学院、ITの高度な講座など、中長期のキャリアづくりにつながるもの
特定一般教育訓練最大50%(25万円)早く再就職したりキャリアをつくったりするのに役立つもの
一般教育訓練20%(10万円)そのほか、雇用の安定や就職に役立つもの

なお、経済産業省の「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」とは併用できません。2つの制度の違いと選び方は、次の記事にまとめています。

リスキリング補助金を個人で使うには|教育訓練給付金とキャリアアップ支援事業の違いと選び方

教育訓練給付金には一般・特定一般・専門実践の3種類があります。3種類の違いと、自分がどれに当たるかの見分け方は、教育訓練給付金とは|一般・特定一般・専門実践の違いと条件・もらえる額で解説しています。

いくら戻る?50%→70%→80%の仕組み

専門実践教育訓練給付金は、条件を満たすごとに3段階で上乗せされます。

段階支給される額上限
① 受講中・修了したとき受講料などの50%。受講開始日から6か月ごとに支給年間40万円
② 修了して、資格を取り、就職したときさらに20%(合計70%)年間16万円
③ ②に加えて、賃金が受講前より5%以上上がったときさらに10%(合計80%)年間8万円
  • ③の上乗せは、2024年10月1日以降に受講を始めた人が対象です。それより前に始めた人は最大70%です
  • ②と③の上限は「年間」なので、2年の講座なら②は32万円、③は16万円が上限になります
  • ①の50%にあたる額が4,000円を超えない場合は、支給されません

計算の例:2年の講座で170万円かかった場合

厚生労働省の資料には、次の計算例が載っています。2年の講座で、入学料が10万円、6か月ごとの受講料が40万円(教育訓練経費の合計170万円)のケースです。

期間教育訓練経費支給額
第1期(最初の6か月)50万円(入学料を含む)25万円
第2期40万円15万円
第3期40万円20万円
第4期40万円20万円
資格を取って就職したとき—32万円
賃金が5%以上上がったとき—16万円
合計170万円128万円

第2期が20万円ではなく15万円なのは、1年目(第1期と第2期)の支給が年間上限の40万円で頭打ちになるためです。条件をすべて満たすと、170万円のうち128万円が戻り、自己負担は42万円になります。

働きながら受けられる?在職中に70%・80%を受ける条件

雇用保険の条件

専門実践教育訓練給付金を受けられるのは、次のどちらかに当てはまる人です。

  • 講座を始める日に雇用保険に入っていて、加入していた期間が3年以上ある人(在職中)
  • 雇用保険に入っていた人で、辞めてから講座を始めるまでが1年以内、かつ加入していた期間が3年以上ある人(離職中)

初めて教育訓練給付金を受ける人は、加入期間が2年以上あれば対象になります。

加入期間は、同じ会社で続けて雇用保険に入っていた期間で数えます。前の会社を辞めてから次の会社に入るまでの空白が1年以内なら、2つの会社の期間を合わせて数えられます。

在職中の人が70%を受ける条件:修了後1年以内に資格を取る

②の「資格を取って就職」という条件は、仕事を辞めて学ぶ人だけのものではありません。厚生労働省の資料では、雇用保険に入って働き続けている人が、修了日の翌日から原則1年以内に、その講座の目標の資格を取った場合も、②の対象に含まれています。

つまり、会社を辞めずに講座を受けて、修了後1年以内に資格を取れば、70%まで受け取れます。

資格は、原則として、受講を始めた時点で予定されていた最初の試験で取る必要があります。また、合格したあとに名簿への登録や免許の取得が必要な資格では、登録や免許取得の日が「資格を取った日」になります。

80%を受けるには会社の証明が必要

③の「賃金が5%以上上がった」かどうかは、受講前の賃金と、修了後の賃金を比べて判断します。

比べる賃金在職中の人の場合
受講前の賃金受講開始日の前日に辞めたとみなして計算した賃金日額(原則、直前6か月の賃金の合計を180で割った額)
修了後の賃金資格を取った日から1年以内の、連続する6か月間の賃金(期間は自分で選ぶ)

どちらの賃金も、自分で会社に証明を頼む必要があります。申請のときには、会社の証明が入った支給申請書と、賃金台帳か給与明細、出勤簿かタイムカードを提出します。

80%まで受け取るつもりなら、講座を受けていることを会社に伝える必要があると考えておきましょう。

対象講座は7種類

専門実践教育訓練給付金の対象になるのは、厚生労働大臣が指定した講座だけです。指定される講座は、次の7種類の課程に分かれています(厚生労働省の資料では6つの番号で示され、5番目に「第四次産業革命スキル習得講座」と「IT資格の課程」がまとめられています)。

#課程どんな講座か例
1業務独占資格・名称独占資格の取得を目標とする養成課程国家資格などを取るための養成施設の課程看護師、介護福祉士、美容師、調理師、保育士、社会福祉士 など
2専門学校の職業実践専門課程・キャリア形成促進プログラム企業と連携して実務を学べるよう、文部科学大臣が認定した専門学校の課程経理・簿記 など
3専門職大学院の専門職学位課程など高度な専門職を育てる大学院の課程MBA、MOT
4職業実践力育成プログラム大学・大学院・短大・高専が社会人向けに開く、文部科学大臣が認定したプログラム大学の社会人向け課程
5第四次産業革命スキル習得講座(Reスキル講座)IT などの成長分野で、経済産業大臣が認定した社会人向けの講座(ITスキル標準レベル3以上)以前の資料では、クラウド・IoT が例に挙がっている
6一定レベル以上のIT資格の取得を目標とする課程ITスキル標準(ITSS)で、作業をすべて一人でこなせるとされるレベル3以上の資格を目指す課程以前の資料では、シスコ技術者認定 CCNP、情報処理安全確保支援士が例に挙がっている
7専門職大学・専門職短期大学・専門職学科の課程実践的な職業教育を行う大学などの課程専門職大学の課程

働きながら学びたい社会人が選びやすいのは、通信やeラーニングの講座もある「5. Reスキル講座」と、「1. 資格の養成課程」のうちキャリアコンサルタントのように短い期間で受けられるものです。

指定講座は検索システムで探す

指定されている講座は、厚生労働省の「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システム」で探せます。検索システムの講座情報は、2026年10月1日時点のものです。

検索のコツ
  • 「実施方法」は、最初は「通学」だけにチェックが入っています。通信(郵送)とeラーニングにもチェックを入れないと、オンライン講座が結果に出てきません
  • 講座には指定の期間があります。受講を始める日が指定期間に入っているかも確かめましょう

受講前の手続き:受講開始日の2週間前まで

専門実践教育訓練給付金は、受講を始める前にハローワークで手続きをしていないと受け取れません。流れは次のとおりです。

  1. 自分が条件を満たすかと、受けたい講座が指定講座かを確かめる
  2. ハローワークの「訓練対応キャリアコンサルタント」による訓練前キャリアコンサルティングを受け、就業の目標などを書いたジョブ・カードを受け取る
  3. 受講開始日の2週間前までに、住所を管轄するハローワークで受給資格確認の手続きをする(来所・電子申請・郵送・代理人。郵送は消印有効)
  4. 講座を申し込み、受講料を支払って受講を始める

受講開始日は、通学制なら講座の開講日、通信制なら教材の発送日です。本人が初めて出席した日とは限らないので、申し込みは余裕をもって行いましょう。

受給資格確認で出す主な書類

  • 教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票(マイナンバーの記載が必要)
  • ジョブ・カード(訓練前キャリアコンサルティングで発行されてから1年以内のもの)
  • 本人・住所を確認できる書類(マイナンバーカード、運転免許証など)
  • マイナンバーを確認できる書類
  • 写真2枚(以降の申請でマイナンバーカードを提示する場合は省略できる)
  • 振込先の通帳かキャッシュカード
  • 過去に専門実践・特定一般の給付金を受けたことがある人は、再受給時報告

受講中・修了後の支給申請

受給資格確認とは別に、お金を受け取るための支給申請が必要です。専門実践教育訓練給付金は、段階ごとに申請の期限があります。

申請タイミングと期限
① 受講中(50%)受講開始日から6か月ごとの期間が終わった翌日から1か月以内
② 修了したとき(50%)修了日の翌日から1か月以内
③ 資格を取って就職したとき(+20%)就職した日(在職中の人は資格を取った日)の翌日から1か月以内。②とまとめて申請してもよい
④ 賃金が5%以上上がったとき(+10%)就職した日(在職中の人は資格を取った日)の翌日から6か月たった日から6か月以内。来所か郵送で申請する

申請のときには、スクールが発行する受講証明書(修了したときは修了証明書)や、受講料の領収書が必要です。クレジットカードで支払った場合は、クレジット契約証明書などを保管しておきましょう。

対象になる費用・ならない費用

給付の計算のもとになる「教育訓練経費」は、スクールに支払った入学料と受講料だけです。

対象になる対象にならない
入学料、受講料検定試験の受験料、必須ではない補助教材費、補講費、行事の参加費、交通費、パソコンなどの器材の費用、クレジット会社の手数料、申請時点で払っていない分 など
  • 割引を受けた場合は、割引後の額が経費になります
  • スクールなどから一部が戻ってくる予定がある場合(現金だけでなく、パソコンの無償提供なども含む)は、その分を差し引いて申告します
  • 会社が受講料にあてる手当を出す場合も、その分を差し引きます

2回目以降・仕事を辞めた人の注意点

2回目以降は加入期間の数え直しと上限がある

  • 前に教育訓練給付金を受けた人は、そのときの受講開始日より前の加入期間は数えられません。前回の受講開始日以降に、加入期間が改めて3年以上必要です
  • 今回の受講開始日の前日から3年以内に教育訓練給付金を受けていると、支給されません。数え始めは前回の最後の支給決定日で、専門実践は修了後や資格取得後にも支給があるため、受講開始日から数えるより遅くなります。詳しい数え方は教育訓練給付金の2回目はいつから?3年の数え方と専門実践の上限で説明しています。
  • 専門実践教育訓練を何回か受ける場合、最初に給付を受けた講座の受講開始日から10年の間に始めた講座の給付は、合計192万円が上限です(最初の受講開始日が2024年9月30日以前の人は168万円)

仕事を辞めた人は「1年以内」に始める

辞めた人が使えるのは、辞めた日の翌日から1年以内に講座を始めた場合です。妊娠・出産・育児・病気・けがなどで、30日以上続けて講座を受けられなかった場合は、ハローワークに申し出ると、その期間の分だけ期限を延ばせます(最大で辞めてから20年以内まで)。

失業中なら「教育訓練支援給付金」もある

専門実践教育訓練を昼間の通学制で受けるなど、一定の条件を満たす人が失業状態にある場合は、受講中の生活を支える教育訓練支援給付金も受けられます。金額は、雇用保険の基本手当の日額の60%にあたる額です。受講開始時に45歳未満であることなどが条件になります。

よくある質問

給付金を使うと会社に知られますか?

受講前の手続きや、50%・70%の支給申請の書類として厚生労働省の資料に挙がっているものには、会社の証明は含まれていません。一方、80%の申請(賃金が5%以上上がったとき)には、会社の証明が入った申請書と賃金の書類が必要です。80%まで受け取るなら、会社に伝えることになります。

資格が取れなかったら、給付金はもらえませんか?

講座を修了していれば、受講中・修了時の50%は受け取れます。70%・80%への上乗せは、資格を取ることが条件なので受けられません。

パソコン代やテキスト代も対象ですか?

パソコンなどの器材の費用は対象外です。補助教材費も、受講に必ず必要とされないものは対象外です。対象になるのは、スクールに支払った入学料と受講料です。

仕事を辞めていても使えますか?

辞めてから講座を始めるまでが1年以内で、雇用保険に入っていた期間の条件を満たしていれば使えます。資格を取って修了後1年以内に雇用保険に入る形で就職すれば、70%への上乗せも受けられます。

働きながら受けるなら、どんな講座がいいですか?

働きながら受ける人には、通信やeラーニングで受けられる講座が選びやすいでしょう。検索システムで探すときは、実施方法の「通信(郵送)」と「eラーニング」にもチェックを入れてください。

まとめ

  • 専門実践教育訓練給付金は、指定講座の受講料などの最大80%が戻る、雇用保険の給付
  • 雇用保険に入っていた期間が3年以上(初めての人は2年以上)あれば、働きながらでも使える
  • 在職中の人も、修了後1年以内に資格を取れば70%。80%には賃金の上昇と会社の証明が必要
  • 受講開始日の2週間前までに、訓練前キャリアコンサルティングとハローワークでの受給資格確認を済ませる
  • 対象の講座は7種類。指定講座は厚生労働省の検索システムで探せる

まずは検索システムで、受けたい分野に指定講座があるかを確かめ、最寄りのハローワークで訓練前キャリアコンサルティングの予約をするところから始めましょう。

出典(2026年10月3日確認)

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