働く人の4人に3人が今後のキャリアに不安を抱えています。マンパワーグループが2026年6月に実施した「キャリア開発の実態調査2026」で明らかになった数字です。一方で、企業側はすでに約9割がキャリア開発施策を導入しています。施策はあるのに、不安は消えていない。この記事では、その「ギャップ」がどこから生まれているのかを数字で確認し、会社の制度を待つのではなく自分でキャリアを動かすために何ができるのかを整理します。
施策はあるのに届いていない――調査が示す3つの数字
マンパワーグループの調査でまず押さえておきたいのは、企業の取り組みと従業員の実感が大きくずれているという事実です。制度の有無ではなく、その「質」が問われる段階に入っています。
導入率9割、でも不安は75%
調査によると、キャリア開発施策の導入率は約9割に達しています。ところが従業員の約4人に3人(75%)が今後のキャリアに不安を抱えたままです。
言い換えると、キャリア支援は「用意する」ことと「届く」ことがまったく別の課題だということです。導入そのものがゴールになってしまうと、数字の上では整っていても、働く人の実感は置き去りになります。
1on1の満足度はわずか17%
ギャップが最も象徴的に表れているのが1on1面談です。1on1面談とは、上司と部下が定期的に1対1で行う対話の機会を指します。
調査では1on1面談の経験率は56%と半数を超えています。ところが、その満足度はわずか17%にとどまりました。経験した人の多くが「やって良かった」と感じきれていないということです。
面談の場は設けられても、キャリアの相談というより進捗確認で終わってしまう。読者の多くも、こうした「形だけの面談」に心当たりがあるのではないでしょうか。
重要度は上がっても予算は増えない
企業側の数字にも、ちぐはぐさが見えます。
- キャリア開発施策の重要度が昨年度より上昇したと答えた企業は43%
- 一方で、予算が増加した企業は23%にとどまる
- 推進上の課題を挙げる企業は8割にのぼる
重要だと認識する企業は増えているのに、そこに割く予算は追いついていません。現場が「もっと力を入れたい」と思っても、リソースが伴わない。従業員に届かない一因は、この構造的な制約にもあると考えられます。
なぜ施策は従業員に届かないのか
数字のギャップを「会社の怠慢」で片づけてしまうと、本質を見誤ります。届かない背景には、いくつかの構造的な理由があります。
施策の効果は「継続年数」で大きく変わる
調査では、施策の効果を実感している企業は全体で45%でした。ただし、この数字は条件で大きく動きます。
つまり、多くの企業で施策が「届いていない」ように見えるのは、まだ始めて日が浅く、効果が表面化する前の段階にあるケースも含まれていると読めます。制度は導入した瞬間に機能するわけではありません。
「受け身」では支援を使いこなせない
もう一つの理由は、従業員側の関わり方です。制度が用意されていても、本人が「自分のキャリアをどうしたいか」を言語化できていなければ、1on1も研修も宝の持ち腐れになります。
面談の満足度が17%にとどまる背景には、会社側の運用の問題だけでなく、「何を相談していいか分からない」まま臨んでいる従業員の状況も重なっていると考えられます。支援は、使う側に準備があって初めて力を発揮します。
会社の制度を待たずに動くための3ステップ
ここからは、調査が示した現実をふまえて、個人が今日から取れる行動を整理します。会社の施策が改善するのを待つのではなく、自分からキャリアを動かす側に回るための手順です。
キャリアの現在地を棚卸しする
まず、自分のスキル・経験・やりたいことを書き出します。1on1の満足度が低い一因が「何を話せばいいか分からない」ことなら、話す材料を自分で用意するのが最短の解決策です。
- これまで担当した業務と、身につけたスキルを一覧にする
- 今の仕事で物足りない点・伸ばしたい点を3つ書き出す
- 3年後にどんな働き方をしていたいかを一文で言語化する
これだけで、次の面談は「進捗確認」から「キャリアの相談」に変わります。
社内の施策を「選んで」使う
約9割の企業が何らかの施策を持っているなら、使わない手はありません。研修、資格取得支援、社内公募、メンター制度など、自社にある制度を一度リストアップしてみてください。
重要なのは、全部に手を出すことではなく、棚卸しで見えた「伸ばしたい点」に直結するものを選ぶことです。目的が定まっていれば、同じ1on1でも「この研修を受けたい」と具体的に相談できます。
社外の選択肢で視野を広げる
社内の施策だけで不安が消えないなら、社外に目を向ける価値があります。副業、社外の勉強会、オンライン講座などは、今の会社の評価軸から離れて自分の市場価値を確かめる機会になります。
社外で通用する経験を少しずつ積んでおくことは、今の会社に残る場合でも、転職を考える場合でも、どちらにも効く備えになります。
この記事のまとめ
マンパワーグループの調査が浮き彫りにしたのは、「キャリア支援の制度はあるのに、働く人の不安は消えていない」という現実でした。導入率9割に対して不安を抱える従業員は75%、1on1の満足度は17%。この数字は、制度の有無ではなく「効いているか」が問われる時代に入ったことを示しています。
ただし、効果を実感する企業が継続年数とともに増えることも分かっています。制度は積み重ねで効いてくるものであり、同時に、使う側の準備で結果が変わるものでもあります。
会社の施策が改善するのを待つより、まずは自分のキャリアの棚卸しから始めるのが近道です。現在地を言葉にできれば、社内の制度も、社外の選択肢も、ぐっと使いやすくなります。キャリアに漠然とした不安があるなら、今日ノートを1ページ開いて、自分の経験と「伸ばしたいこと」を書き出すところから始めてみてください。
よくある質問
キャリア開発の実態調査2026はどんな調査ですか?
マンパワーグループが2026年6月12日〜25日に実施した調査です。企業で働く経営者・人事担当者・従業員を対象とし、有効回答は264件です。キャリア開発施策の導入状況や効果、従業員の不安の実態を調べています。
なぜ企業の施策があっても従業員の不安は減らないのですか?
導入率は約9割に達しているものの、施策が従業員に「届いている」かは別問題だからです。1on1面談の満足度が17%にとどまるように、制度が形だけの運用になっているケースがあります。また、施策の効果は継続年数とともに表れ、5年以上続ける企業では効果実感が7〜8割まで上がると報告されています。
1on1面談を有意義にするにはどうすればいいですか?
面談前に、自分のスキルの棚卸しと「伸ばしたいこと」を言語化しておくことが有効です。調査では経験率56%に対し満足度17%と差が大きく、相談の材料を準備しないまま臨むと進捗確認で終わりがちです。話したいテーマを事前に1つ決めておくだけでも、面談の質は変わります。
会社に頼らず自分でキャリアを動かすには何から始めればいいですか?
まずキャリアの棚卸し(経験・スキル・やりたいことの書き出し)から始め、次に自社にある施策を目的に合わせて選び、必要なら副業や社外勉強会で視野を広げる、という順番がおすすめです。社外活動を始める際は、就業規則で副業・兼業の可否を確認してください。
参考文献
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