「リスキリングの補助金を、会社ではなく個人で使いたい」と考えたとき、使える国の制度は主に2つあります。経済産業省のリスキリングを通じたキャリアアップ支援事業と、厚生労働省の教育訓練給付金です。
2つは名前も窓口も違い、同じ講座で両方を使うことはできません。どちらが合うかは、雇用保険に入っているか、転職を目指すかで決まります。この記事では2つの違いを表にまとめ、自分がどちらを使えるかを順に判定できるようにしました。どちらも使えない個人事業主・フリーランスの人向けの選択肢も紹介します。
- 個人が使える主な制度は、キャリアアップ支援事業(経済産業省)と教育訓練給付金(厚生労働省)の2つ
- 2つは併用できない。どちらか一方を選ぶ
- 他社への転職を目指す会社員はキャリアアップ支援事業、転職しない人・仕事を辞めた人は教育訓練給付金が候補
- 雇用保険に入っていない個人事業主・フリーランスは、どちらも原則使えない。求職者支援制度やリ・スキリング等教育訓練支援融資を検討する
個人が使えるリスキリング補助金は主に2つ
「リスキリング 補助金」で検索すると、企業向けの助成金や自治体の制度も含めて、たくさんの制度が出てきます。そのうち、会社員などの個人が自分で受講料の負担を軽くできる国の制度は、主に次の2つです。
| 制度 | 担当 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 | 経済産業省 | 転職を目指す会社員が、キャリア相談・講座・転職支援をまとめて受けられる。受講料は最大70%(上限56万円)が補助される |
| 教育訓練給付金 | 厚生労働省 | 雇用保険に入っている人(入っていた人)が、国の指定講座を受けると、受講料の20〜80%がハローワークから支給される |
「補助金」と「給付金」はお金の戻り方が違う
2つの制度は、お金がどこから、どう戻ってくるかが違います。

- キャリアアップ支援事業(補助金):補助金は個人ではなく、国に採択されたスクールや人材会社(補助事業者)に支払われます。受講する人は、スクールから値引きやキャッシュバックを受ける形で負担が軽くなります。自分でハローワークや役所に申請する手続きはありません
- 教育訓練給付金(給付金):受講する人がいったん受講料を支払い、条件を満たすとハローワークから本人に支給されます。受講前と修了後に、自分でハローワークの手続きをします
なお、企業が社員に研修を受けさせたときの「人材開発支援助成金」は企業向けの制度なので、個人では申請できません。
2つの制度の違い【比較表】
| 項目 | キャリアアップ支援事業 | 教育訓練給付金 |
|---|---|---|
| 担当 | 経済産業省 | 厚生労働省 |
| 対象になる人 | 会社などに雇われて在職中の人 | 雇用保険に入っている人、または辞めてから1年以内の人(加入期間の条件あり) |
| 転職 | 別の会社への転職を目指すことが条件 | 条件ではない |
| 対象の講座 | 補助事業者(採択されたスクールなど)の講座 | 厚生労働大臣が指定した講座 |
| 戻る額 | 最大70%(上限56万円) | 講座の種類により20%〜最大80%(専門実践は年間上限64万円) |
| お金の戻り方 | スクールからの値引き・キャッシュバック | ハローワークから本人へ支給 |
| 手続きの窓口 | 補助事業者(スクール) | ハローワーク |
| いつまで | 2027年3月31日までに修了する人まで | 期限の定めはない(講座ごとに指定の期間がある) |
いちばん大きな違いは、転職を目指すかどうかと、雇用保険に入っているかどうかです。キャリアアップ支援事業は、講座を受けるだけが目的の人は対象外です。一方、教育訓練給付金は転職しなくても使えますが、雇用保険に入っていた期間の条件があります。
2つの制度は併用できない
同じ人が、キャリアアップ支援事業と教育訓練給付金の両方を使うことはできません。キャリアアップ支援事業の事務局は、補助事業者向けのFAQで次のように答えています。
(リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 事務局「補助事業者向けFAQ」No.148、2025年8月29日更新)
スクールによっては、同じ講座が「キャリアアップ支援事業の対象」と「教育訓練給付金の指定講座」の両方に当てはまることがあります。その場合も、使えるのはどちらか一方です。申し込みの前に、どちらの制度で受けるのかをスクールに確かめておきましょう。

あなたはどっち? 判定チャート
次の順に答えていくと、自分が使える制度の候補がわかります。
- はい → Q2へ
- いいえ(個人事業主・フリーランス・専業主婦など) → どちらも使えない人の選択肢へ
Q2. いま会社などに雇われて働いていますか?
- はい → Q3へ
- いいえ(すでに辞めている) → 教育訓練給付金(キャリアアップ支援事業は在職中の人が対象)
Q3. 別の会社への転職を目指していますか?
- はい → キャリアアップ支援事業と教育訓練給付金の両方が候補。講座の修了が2027年3月31日に間に合うか、キャリア相談や求人の紹介も受けたいかで選ぶ
- いいえ(今の会社で働き続けたい) → 教育訓練給付金
Q1で「はい」でも、教育訓練給付金には雇用保険に入っていた期間の条件があります(初めて使う人は1年以上から)。詳しくは教育訓練給付金が向いている人で説明します。

キャリアアップ支援事業が向いている人
キャリアアップ支援事業が向いているのは、会社などに雇われていて、別の会社への転職をはっきり目指している人です。キャリア相談・講座の受講・転職支援をひと続きで受けられ、キャリア相談と転職支援は無料です。
補助は2回に分けて受けられます。
| タイミング | 補助 |
|---|---|
| 講座を修了したとき | 受講料(税別)の1/2(上限40万円) |
| 転職して、転職先で1年続けて働いたとき | さらに受講料(税別)の1/5(上限16万円) |
| 合計 | 最大70%(上限56万円) |
対象になるのは、補助事業者に登録するときと、キャリア相談の初回の面談のときに在職している人です。経営者・個人事業主・フリーランスなど、雇用契約を結んでいない人は対象外です。国家公務員・地方公務員は原則として対象外ですが、雇用保険に入っている人は対象になります。
受付の締切が近づいている
対象になる人の詳しい条件、申し込みの流れ、補助を使えるスクールは、次の記事にまとめています。

教育訓練給付金が向いている人
教育訓練給付金が向いているのは、次のような人です。
- 今の会社で働き続けながら、スキルを伸ばしたい人
- 仕事を辞めて、次の仕事に向けて学びたい人(辞めてから1年以内)
- キャリアアップ支援事業の修了期限(2027年3月31日)に間に合わない人
転職が条件ではなく、期限の定めもないため、使える人の幅はキャリアアップ支援事業より広い制度です。
給付の種類は3つ
国が指定した講座は、レベルなどに応じて3種類に分かれています。受講する講座がどれに当たるかで、戻ってくる額が変わります。
3種類の違いと、自分がどれに当たるかの見分け方は、教育訓練給付金とは|一般・特定一般・専門実践の違いと条件・もらえる額で詳しく解説しています。
| 種類 | 給付の割合(上限) | 上乗せの条件 |
|---|---|---|
| 専門実践教育訓練 | 50%(年間40万円) | 資格を取るなどして修了後1年以内に就職すると70%(年間56万円)。さらに賃金が受講前より5%以上上がると80%(年間64万円) |
| 特定一般教育訓練 | 40%(20万円) | 資格を取るなどして修了後1年以内に就職すると50%(25万円) |
| 一般教育訓練 | 20%(10万円) | なし |
70%・80%・50%への上乗せは、2024年10月以降に始まる講座が対象です。専門実践教育訓練の給付は、受講中に6か月ごとに支給されます。特定一般・一般は、修了後に支給されます。
専門実践教育訓練給付金について、働きながら最大80%を受け取る条件や受講前の手続きは、次の記事で詳しく説明しています。
専門実践教育訓練給付金とは|働きながら最大80%を受け取る条件と、受講前の手続き
雇用保険の条件
教育訓練給付金を受けられるのは、次のどちらかに当てはまる人です。
- 雇用保険に入っている人で、講座を始める日に、雇用保険に入っていた期間が3年以上ある
- 以前に雇用保険に入っていた人で、辞めてから講座を始めるまでが1年以内、かつ雇用保険に入っていた期間が3年以上ある
初めて教育訓練給付金を使う人は、必要な期間が短くなります。専門実践教育訓練は2年以上、特定一般・一般教育訓練は1年以上です。
一方、講座を始める日の前日から3年以内に教育訓練給付金を受け取っていた場合は、支給されません。2回目以降のルールはよくある質問にまとめています。

なお、妊娠・出産・育児・病気・けがなどで、辞めてから30日以上続けて講座を受けられなかった場合は、ハローワークに申し出ると「辞めてから1年以内」の期限を延ばせます(最大で辞めてから20年以内まで)。
受講前の手続きを忘れない
専門実践教育訓練と特定一般教育訓練は、講座を始める日の2週間前までに、ハローワークで手続きをする必要があります。その前に、ハローワークのキャリアコンサルタントによる相談(訓練前キャリアコンサルティング)を受けて、職業の目標などを書いた「ジョブ・カード」の交付を受けておきます。講座の申し込みを決めたら、早めにハローワークへ相談しましょう。
指定されている講座は、下記で探せます。
「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システム」
AI・データなどIT分野の講座を給付金で受けたい人は、第四次産業革命スキル習得講座(Reスキル講座)とはで、講座の選び方と自己負担の計算をまとめています。
どちらも使えない人の選択肢(個人事業主・フリーランスなど)
個人事業主・フリーランスの人は、雇用保険に入っていないため、教育訓練給付金は原則として使えません(会社員を辞めて1年以内で、加入期間の条件を満たしていれば使えます)。キャリアアップ支援事業も、雇用契約を結んでいない人は対象外です。
それでも、国の制度がまったく無いわけではありません。主な選択肢は次の2つです。

求職者支援制度:無料の職業訓練と、条件を満たせば月10万円
求職者支援制度は、雇用保険を受けられない人が、無料の職業訓練を受けられる厚生労働省の制度です。収入などの条件を満たすと、訓練を受けている間、職業訓練受講給付金(月10万円)と、通所手当(交通費。月上限42,500円)などが支給されます。
| 状況 | 使い方 |
|---|---|
| フリーランス・自営業を廃業した人 | 給付金を受けながら訓練を受けられる対象に入っている |
| フリーランスで働きながら、正社員への転職を目指す人 | 給付金は受けずに、無料の訓練だけを受けられる対象に入っている |
給付金を受ける主な条件は、本人の収入が月8万円以下、世帯全体の収入が月30万円以下、世帯全体の金融資産が300万円以下であること、訓練の日にすべて出席することなどです。
リ・スキリング等教育訓練支援融資:受講料と生活費を借りる
2025年10月に始まった、厚生労働省の融資の制度です。雇用保険に入っていない人が教育訓練を受けるとき、受講料(年間120万円まで)と生活費(月10万円まで)を借りられます。融資は労働金庫(ろうきん)が行い、手続きはハローワークで進めます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な対象者 | 雇用保険に入っておらず、ハローワークに求職の申し込みをしている人。通算3年以上働いた経験があること(雇用契約書などで証明)など |
| 対象の講座 | 期間1か月以上4年以内の、大学・専修学校などの講座、教育訓練給付の指定講座を持つ機関の講座(指定講座でなくてもよい)、公共職業訓練など |
| 借りられる期間 | 最大2年分(年収200万円未満の人・仕事を辞めた人・収入を証明できない人は最大1年分) |
| 金利 | 年2%(固定) |
| 返済の一部免除 | 修了後1年以内に雇用保険に入る形で就職して1年以上働き、賃金が訓練前より5%以上上がると、残りの借金の30%(上限100万円)が免除。10%以上なら50%(上限150万円) |
よくある質問
いくら戻ってきますか?
キャリアアップ支援事業は受講料の最大70%(上限56万円)です。教育訓練給付金は講座の種類によって20%〜80%で、いちばん大きい専門実践教育訓練は年間64万円が上限です。どちらも、条件を満たしたときの最大の額です。専門実践教育訓練給付金の計算の例は「専門実践教育訓練給付金とは」にまとめています。
いつまで使えますか?
キャリアアップ支援事業は、講座を2027年3月31日までに修了する人が対象です。教育訓練給付金には期限の定めがありませんが、講座ごとに指定の期間があります。
転職しなくても使えますか?
教育訓練給付金は、転職しなくても使えます。キャリアアップ支援事業は、別の会社への転職を目指していることが条件です。ただし、転職を目指したものの結果的に転職しなかった場合も、講座を修了したときの補助(1/2)は受けられます。
公務員は使えますか?
キャリアアップ支援事業は、公務員は原則として対象外ですが、雇用保険に入っている人は対象です。教育訓練給付金も、雇用保険に入っていた期間の条件を満たす必要があります。
同じ講座で両方を使うことはできますか?
できません。キャリアアップ支援事業と教育訓練給付金は併用できないため、どちらか一方を選びます。
教育訓練給付金は2回目も使えますか?
使えますが、次の条件があります。
- 前回の受講開始日から数え直し:前に教育訓練給付金を受けた人は、そのときの受講開始日より前の雇用保険の加入期間は数えられません。前回の受講開始日以降に、加入期間が改めて3年以上必要です(初めての人向けの「1年・2年でよい」特例は使えません)
- 3年以内の受給は不可:今回の受講開始日の前日から3年以内に教育訓練給付金を受け取っていると、支給されません
- 同時に複数は不可:複数の講座について同時に支給申請をすることはできません
- 専門実践は10年で192万円まで:専門実践教育訓練を何回か受ける場合、最初に給付を受けた講座の受講開始日から10年の間に始めた講座の給付は、合計192万円が上限です(最初の受講開始日が2024年9月30日以前の人は168万円)
求職者支援制度は何回も使えますか?
職業訓練受講給付金(月10万円)は、過去6年以内に受け取ったことがあると支給されません。また、職業訓練は原則として、1つの訓練を修了してから1年たたないうちに次の訓練を受ける「連続受講」はできません。ただし、ハローワークが必要と認めた場合は、求職者支援訓練の基礎コースの後に、実践コースや公共職業訓練へ続けて進めます。
まとめ
- 個人が使える主なリスキリングの制度は、キャリアアップ支援事業(経済産業省)と教育訓練給付金(厚生労働省)の2つ。併用はできない
- 在職中で、別の会社への転職を目指す人はキャリアアップ支援事業が候補。講座の修了期限は2027年3月31日
- 転職しない人・仕事を辞めて1年以内の人は教育訓練給付金。雇用保険に入っていた期間の条件と、受講前の手続きに注意
- 雇用保険に入っていない個人事業主・フリーランスは、求職者支援制度の無料の訓練や、リ・スキリング等教育訓練支援融資を検討する
迷ったら、判定チャートで自分の候補を絞り、キャリアアップ支援事業ならスクールの無料相談、教育訓練給付金ならハローワークで、条件に当てはまるかを確かめるところから始めましょう。
- リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業 事務局「転職をご検討の方」
- 同 事務局「補助事業者の公募要領(六次公募)」
- 同 事務局「補助事業者向けFAQ」
- 厚生労働省「教育訓練給付金」
- ハローワークインターネットサービス「教育訓練給付金」
- 厚生労働省「専門実践教育訓練の「教育訓練給付金」のご案内」
- 厚生労働省「求職者支援制度のご案内」
- 厚生労働省「求職者支援制度・訓練受講のしおり」
- 厚生労働省「リ・スキリング等教育訓練支援融資」
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