リスキリング等教育訓練支援融資とは|使える人・返済免除・申込の順番

学び直して正社員になりたい。でも受講料も、学んでいる間の生活費も足りない。そんな人のために2025年10月に始まったのが「リスキリング等教育訓練支援融資」です。受講料と生活費をあわせて借りられ、修了後に就職して賃金が上がれば、借りたお金の一部を返さなくてよくなります。ただし、雇用保険に入って働いている会社員は使えないうえに、申し込む順番を間違えると対象外になる落とし穴があります。この記事では、使える人の見分け方、ほかの給付金との関係、結局いくら返すのか、申込みの順番を、厚生労働省の資料をもとに整理します。

この記事の結論
  • 雇用保険に入っていない人(フリーランス・個人事業主・雇用保険の無いパートなど)や、失業手当を受け終えた人が、受講料と生活費を借りられます
  • 金利は年2%。元金の返済は修了の1年後から始まり、就職して賃金が上がれば残りの最大50%が免除されます
  • ハローワークに相談する前にスクールへ申し込んだ講座は対象外です。講座を決める前にハローワークへ行ってください

使えない人には、別の制度があります。

あなたの状況使う制度
雇用保険に入って働いている(会社員)受講料は教育訓練給付金、働きながら長期の講座を受けるなら専門実践教育訓練給付金、会社を休んで学ぶなら教育訓練休暇給付金
仕事を辞めて、45歳未満で専門実践の講座に昼間通う生活費は教育訓練支援給付金(2027年3月31日までに受講を始めた人だけ)
雇用保険に入っていない・失業手当を受け終えたこの記事の融資、または求職者支援制度

※制度の情報は2026年10月13日時点で確認したものです。

目次

リスキリング等教育訓練支援融資とは

リスキリング等教育訓練支援融資(正式名称は「リ・スキリング等教育訓練支援融資」)は、学び直しにかかる受講料と、学んでいる間の生活費を貸し付ける国の融資制度です。2025年10月に始まりました。

窓口は2つです。使えるかどうかの確認と書類の発行はハローワーク、お金を貸すのは労働金庫(ろうきん)です。雇用保険の加入期間などが無い人の学び直しを支える「求職者支援制度」の一部として作られました。

給付金と違い、借りたお金は利息をつけて返すのが原則です。そのうえで、修了後に雇用保険に入る仕事に就き、賃金が上がった人だけ、返済の一部が免除されます。

使える人・使えない人

雇用保険に入っている人と、失業手当を受けられる人は使えない

この融資を使えるのは、ハローワークで「特定求職者」と認められた人です。条件の一つが「雇用保険の被保険者でも、雇用保険の受給資格者でもないこと」なので、次のように分かれます。

今の状況使えるか
雇用保険に入って会社で働いている使えない
会社を辞めて、失業手当(基本手当)を受けられる・受けている使えない
失業手当を受け終えた、または受ける資格が無いまま辞めた使える
雇用保険の無い短時間のパート・アルバイトで働いている使える
フリーランス・個人事業主として働いている使える(会社に雇われることを目指す場合)

フリーランスについて、厚生労働省の担当者はフリーランス協会の取材に対し、事業を続けている人でも、ハローワークで就職を希望する意思を示せば対象になると説明しています。一方で、フリーランスを続けたい人は対象外です。この融資は、学び直して会社に雇われることを目指す人のための制度だと考えてください。

そのほかの主な条件

  • ハローワークに求職の申込みをしている
  • 働く意思と能力があり、職業訓練などの支援が必要だとハローワークが認めた
  • 訓練を始める時点で、通算3年以上働いた経験がある(雇用契約書などで証明。何年前でもよいが、昼間の学生だった期間は数えない)
  • 訓練を始める前にキャリアコンサルティングを受け、ジョブ・カードを作っている
  • 申込み時に18歳以上、融資開始時に66歳未満、最後の返済時に76歳未満
  • 融資を受けるろうきんの営業エリアに住んでいる
  • 借りようとする費用に、ほかの給付・融資・奨学金を使っていない

フリーランスの就業経験は、開業届や報酬の明細などで証明します(フリーランス協会の取材記事による)。

教育訓練給付金・教育訓練支援給付金・求職者支援制度との違い

学び直しのお金の制度はいくつもあり、名前も似ています。この融資との違いを表にまとめました。

制度もらう・借りる何に出るか主な対象
教育訓練給付金もらう受講料(20%〜最大80%)雇用保険に入っている人・辞めて1年以内の人
教育訓練休暇給付金もらう会社を休んで学ぶ間の生活費雇用保険に入っている人
教育訓練支援給付金もらう失業中に学ぶ間の生活費辞めた45歳未満で専門実践の講座を受ける人(2027年3月31日まで)
求職者支援制度(職業訓練受講給付金)もらう無料の職業訓練を受ける間の生活費(月10万円など)雇用保険の無い人。本人の収入が月8万円以下などの条件あり
リスキリング等教育訓練支援融資借りる受講料と生活費雇用保険の無い人。収入の条件は無い

雇用保険の無い人にとっては、求職者支援制度が「もらえる」制度、この融資が「借りる」制度です。求職者支援制度は本人と世帯の収入・資産の条件が厳しく、受けられる訓練も無料の職業訓練に限られます。収入があって求職者支援制度の給付金を受けられない人や、大学・専門学校などの有料の講座を受けたい人の受け皿になるのが、この融資です。それぞれの制度の全体像はリスキリング補助金を個人で使うにはにまとめています。

ほかの給付金と一緒に使えるか

この融資は、借りようとする費用に、ほかの給付や融資を使っていないことが条件です。ハローワークに出す申請書には、次の内容を承知したうえで誓約する欄があります。

一緒に使おうとする制度この融資の扱い
教育訓練給付金(指定講座を受け、修了後に給付金を受けるつもり)受講料は借りられない(生活費は借りられる)
教育訓練支援給付金(専門実践の受給資格を確認し、申し込んでいる)受講料も生活費も借りられない
求職者支援訓練・公共職業訓練を受ける受講料は借りられない(もともと無料のため)。生活費だけ
職業訓練受講給付金・求職者支援資金融資一緒に使えない
学校や国・自治体の奨学金同じ費用には使えない

雇用保険の加入期間が3年以上あり、辞めて1年以内の人は、教育訓練給付金とこの融資の両方の対象になることがあります(失業手当を受け終えた人など)。その場合でも、給付金を受ける講座の受講料をこの融資で借りることはできません。「受講料は給付金、生活費は融資」と分けて使えるかは、申請書の書き方からは読み切れないため、最初の相談でハローワークに確かめてください。

対象の講座と、返済免除になる講座

融資の対象になるのは、期間が1か月以上4年以内で、次のどれかに当たる講座です。

講座の種類融資返済免除
大学・大学院・短大・高専・専門学校・各種学校の講座対象対象外
教育訓練給付金の指定講座対象対象
指定講座を持つスクールなどの、指定講座ではない講座対象対象外
求職者支援訓練・公共職業訓練(ハロートレーニング)対象(生活費だけ)対象

融資の対象は広く、教育訓練給付金の指定講座を持つスクールであれば、その講座自体が指定されていなくても借りられます。ところが、返済免除の対象は、教育訓練給付金の指定講座と公的な職業訓練だけです。大学や専門学校の講座でも、教育訓練給付金の指定講座になっているものは免除の対象になります。

返済免除まで考えるなら、講座を選ぶ段階で「指定講座かどうか」を確かめてください。指定講座かどうかは厚生労働省の「教育訓練給付制度 検索システム」で、公的な職業訓練はハローワークインターネットサービスの「ハロートレーニングコース情報検索」で調べられます。

なお、フリーランス協会の取材記事によると、融資は1つの訓練コースに1回で、短い講座をいくつも組み合わせて借りることはできません。

借りられる額と金利・返済のしかた

上限は受講料・生活費それぞれ年120万円

費用上限最大の期間
受講料など(教育訓練費用)年120万円2年(合計240万円)
生活費月10万円(年120万円)2年(合計240万円)

受講料と生活費をあわせると、最大で年240万円、2年で480万円です。ただし、次の人は1年分(合計240万円)までになります。

  • 年収200万円未満の人、年収を証明できない人
  • 仕事を辞めている人(離職者)
  • ろうきんの勤労者互助会・友の会への加入の条件を満たさない人、加入を希望しない人(加入の条件はろうきんごとに違います)

受講料などで借りられるのは、入学金・授業料・教科書代・パソコンなどの学用品代・実習費・受験費用です。申し込む時点で払い終えた費用は、受験費用を除いて借りられません。生活費は月10万円を上限に、必要な額を申請します。借りられる月数は、訓練が始まる月から終わる月までの月数です(4月15日〜10月14日の訓練なら7か月)。

金利と返済のしくみ

  • 金利は年2.0%の固定(保証料0.5%を含む)。担保と保証人は要りません(ろうきんが指定する保証機関を使います)
  • 受講料は、ろうきんからスクールへ直接振り込まれます。生活費は3か月ごとに、3か月分までが本人のろうきんの口座に振り込まれます(口座が無ければ作ります)
  • 利息は受講中から払います。元金は、訓練が終わった月の1年後まで待ってもらえ、その後10年以内に毎月同じ額で返します
  • 3か月ごとにハローワークへ行き、訓練の状況を報告して次の3か月分を申し込みます
  • 契約には印紙代がかかります(100万円超500万円以下で2,000円など)
途中でやめると、すぐに返済が始まります
就職でも自己都合でも、訓練を途中でやめると、元金の返済を待ってもらう期間がなくなります。ハローワークとろうきんに届け出て、契約を変えてください。返済が遅れると、遅れた元金に年14.5%の損害金がかかります。

ハローワークの確認を通っても、ろうきんの審査で借りられなかったり、額を減らされたりすることがあります。

返済免除の条件と、いくら減るか

免除の条件

次の条件をすべて満たすと、返済の一部が免除されます。

  • 融資を申し込んだ時点の本人の年収が500万円未満
  • 教育訓練給付金の指定講座、求職者支援訓練、公共職業訓練のどれかを修了した
  • 修了日の翌日から1年以内に、雇用保険に入る仕事に就き、1年以上続けて働いた
  • 就職後の賃金が、訓練を始める前より5%以上上がった
  • 返済が滞っていない
  • ハローワークが指定した日に正当な理由なく来ないなど、就職の支援を断ったことが無い

修了後にアルバイトや業務委託など、雇用保険に入らない形で働いた場合は、免除の対象になりません。

賃金の比べ方

「5%以上上がったか」は、訓練を始める前の働き方によって、比べる期間が違います(返済免除の申請書による)。

訓練を始める前訓練前の額就職後の額
個人事業主・フリーランス訓練を始めた年の前年1年間(1〜12月)の所得就職後2年以内の、連続する1年間の賃金
仕事を辞めていた最後に辞めた日までの連続する6か月間の賃金(辞めてから訓練開始まで2年以内であること)就職後2年以内の、連続する6か月間の賃金
雇用保険の無い仕事をしていた訓練を始める日までの連続する6か月間の賃金同上

仕事を辞めていた人は、辞めてから訓練を始めるまでが2年を超えると、この条件を満たしません。辞めてから時間がたっている人は、最初の相談でハローワークに確かめてください。

免除される額

賃金の上がり方免除される額
5%以上残っている借入の30%(上限100万円)
10%以上残っている借入の50%(上限150万円)

免除は、ハローワークが申請を認めた日に残っている額に掛けて計算します。そのため、繰り上げて返すと残りが減り、免除される額も小さくなります(長野ろうきんの商品説明による)。また、免除された額のうち生活費の分は一時所得として所得税がかかり、一定額を超えると確定申告が要ります。

計算例:240万円借りたら、いくら返す?

次の人を例に、返す額を計算しました。

例の人
  • 35歳、フリーランスのライター。前年の所得は250万円、雇用保険には入っていない
  • 会社員の Web デザイナーを目指し、1年制の教育訓練給付金の指定講座(受講料120万円・架空)を受ける
  • 受講料120万円と、生活費を月10万円×12か月の120万円、合計240万円を借りる
  • 修了の翌月に就職し、1年後に返済免除の申請が認められる

まず、元金を返し始めるまでの2年間(受講中の1年と、修了後の1年)は利息だけを払います。受講料は受講の初めにまとめて振り込まれ、生活費は3か月ごとに増えていくと想定すると、利息の合計はおよそ8.7万円です。その後、元金を10年で返します。

免除なし賃金が5%アップ賃金が10%アップ
免除される額0円72万円(240万円×30%)120万円(240万円×50%)
元金の返済(10年)月 約22,100円月 約15,500円月 約11,000円
10年で返す額約265万円約185万円約132万円
総返済額(利息だけの2年を含む)約274万円約194万円約141万円

この人の場合、就職後1年間の賃金が262.5万円以上なら5%、275万円以上なら10%の条件を満たします(前年の所得250万円と比べるため)。賃金が10%上がれば、240万円借りて返すのは約141万円になり、借りた額の6割ほどで済む計算です。

免除が無くても、利息は12年間で合わせて約34万円です。ただし、ここでの数字は記録者の計算で、実際の利息や返済額はろうきんが決めます。免除の申請が認められるのが遅れて元金の返済が進むと、免除される額は小さくなります。

申込みの順番と期限

スクールより先に、ハローワークへ

先にスクールへ申し込んだ講座は対象外です
ハローワークに出す申請書には、受講する講座が「ハローワークでの初回相談の後に申し込んだもの」であることが条件として書かれています。講座を決めて申し込んでから相談に行くと、その講座では借りられません。

手続きの流れ

時期やること
① 開講の1か月半以上前住んでいる地域のハローワークで求職の申込みをし、受付で「リ・スキリング等教育訓練支援融資を受けたい」と伝える。制度の説明と、特定求職者かどうかの確認を受ける
②キャリアコンサルティングを受け、受講する訓練を決めて、ジョブ・カードを作る
③講座に申し込み、合格・受講が決まる
④ハローワークに申請書を出す。審査が終わると「要件確認書」が出る(有効期限は発行の翌日から2か月)
⑤ 受講料の振込期限の2週間以上前ろうきんに来店を予約し、窓口で融資を申し込む。審査に通れば契約
⑥ 受講中3か月ごとにハローワークへ行き、訓練の状況を報告して融資を申し込む
⑦ 修了後雇用保険に入る仕事に就き、1年以上たったら、希望すれば返済免除を申請する

厚生労働省は、訓練を始める前の手続きに1か月半ほどかかることがあるとしています。ろうきんへの来店が受講料の振込期限の2週間前を過ぎると、受講料の融資を受けられないことがあります。開講日から逆算して、早めにハローワークへ行ってください。

受講中に雇用保険に入る仕事に就いた、融資をやめたい、急に受講料の融資が必要になった、といったときも、すぐにハローワークに連絡します。

よくある質問

会社員でも使えますか?

雇用保険に入って働いている人は使えません。受講料は教育訓練給付金、会社を休んで学ぶ間の生活費は教育訓練休暇給付金を確かめてください。

失業手当をもらっている間は使えますか?

使えません。雇用保険の受給資格者は対象外です。失業手当を受け終えてからなら、ほかの条件を満たせば使えます。辞めて45歳未満で専門実践の講座に通う人は、先に教育訓練支援給付金を確かめてください。

フリーランスを続けながら使えますか?

会社に雇われることを目指しているなら使えます。厚生労働省の担当者は、フリーランス協会の取材に対し、ハローワークで就職を希望する意思を示せば事業を続けている人も対象になると説明しています。フリーランスを続けたい人は対象外です。

もう講座に申し込んでしまいました。使えますか?

ハローワークでの初回相談より前に申し込んだ講座は、申請書の条件に当てはまりません。迷ったら、まずハローワークに相談してください。

審査に落ちることはありますか?

あります。ハローワークの確認を通っても、ろうきんの審査で借りられなかったり、額を減らされたりすることがあります。

訓練中に就職が決まったらどうなりますか?

雇用保険に入る仕事に就いたら、すぐにハローワークに連絡します。その後の融資と返済の扱いは、ハローワークとろうきんに確かめてください。

まとめ

リスキリング等教育訓練支援融資は、雇用保険の無い人が、受講料と生活費を借りて学び直し、会社に雇われることを目指すための制度です。使うなら、次の3ステップで進めてください。

  • 使えるか確かめる:雇用保険に入っていない・失業手当を受けていない・通算3年以上働いた経験がある
  • スクールより先にハローワークへ:開講の1か月半以上前に相談し、それから講座に申し込む
  • 免除まで考えるなら講座を選ぶ:教育訓練給付金の指定講座か、公的な職業訓練を選ぶ

会社員として雇用保険に入っている人は、教育訓練給付金とはや教育訓練休暇給付金とは、仕事を辞めて専門実践の講座に通う45歳未満の人は教育訓練支援給付金とはもあわせて読んでみてください。

参考文献

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