kubellに学ぶAI推進の順番|採用で月200時間削減の理由

kubellに学ぶAI推進の順番|採用で月200時間削減の理由

AIツールを全社に配ったのに、使われないまま終わる。多くの企業が直面するこの壁を、ビジネスチャット「Chatwork」を運営するkubellは別の順番で乗り越えました。AIを入れる前に、まず不要な業務を捨てたのです。その結果、採用部門では月200時間の工数削減が生まれています。この記事では、kubellの全社AI推進プロジェクト「kube-AI」から、業務効率化を成果につなげるための「順番」を具体的に読み解きます。

目次

AI導入より先に「捨てる」を選んだkubellの判断

kubellがまず取り組んだのは、AIツールの選定でも導入でもありません。AI活用の前に不要業務を洗い出して捨てる全社プロジェクト「すてるば」を先行させたことが、この事例の核心です。

「すてるば」で業務の棚卸しから始めた

AIは、今ある業務を速くこなす道具です。裏を返すと、やめてよい業務にAIを適用しても、不要な作業が速くなるだけで成果にはつながりません。kubellはここに先に手を入れました。

多くの現場では「ツールを配れば現場が勝手に使いこなす」という前提で導入が進みます。しかし業務そのものが整理されていなければ、AIは散発的な時短で終わります。捨てる作業を先に済ませることで、AIを適用すべき業務が明確になるという順番が、kubellの判断の背景にあります。

成果を出した部署ごとの具体例

kube-AIは、部署ごとに具体的な成果を公表しています。

  • 採用部門で月200時間の工数削減を実現
  • ブランドルールに沿ったスライド生成の自動化
  • 事業KPIダッシュボード作成の自動化
  • ナーチャリング(見込み顧客の育成)の自動化

これらに共通するのは、繰り返し発生する定型作業を特定し、そこにAIを当てている点です。月200時間という数字は、採用という一部署だけで生まれています。業務の棚卸しを前提にした適用が、まとまった削減につながったと読めます。

AI導入で成果が出ないときは、ツールの性能より「どの業務に当てるか」を疑ってみてください。やめてよい業務を先に捨てることで、AIを適用すべき場所がはっきりします。

ツール配布で終わらせない「組織文化の変革」という設計

kube-AIがツール配布と違うのは、AI推進を組織文化の変革として設計した点です。ここで使われたのが変革管理フレームワーク「ADKAR」でした。

変革管理フレームワーク「ADKAR」とは

ADKARは、組織変革を個人の行動変化の積み重ねとして捉える考え方です。Awareness(認知)、Desire(意欲)、Knowledge(知識)、Ability(能力)、Reinforcement(定着)の頭文字を取ったもので、人が新しいやり方を受け入れて定着させるまでの段階を示します。

ツールを配るだけの導入は、このうち「知識」や「能力」の一部に触れるにすぎません。なぜ変えるのかという認知や、変えたいという意欲が欠けたまま配布すると、現場は元のやり方に戻ります。kubellはこの段階を踏まえてAI推進を進めました。

CEOがプロジェクトオーナーを務める意味

kube-AIでは、CEO自らがプロジェクトオーナーを務めています。これは変革を一部門の取り組みに閉じず、全社の方針として位置づけたことを意味します。

AI推進が情報システム部門や一部の推進担当だけの仕事になると、現場は「自分ごと」として捉えにくくなります。経営トップが旗を振ることで、業務を捨てる判断や新しいやり方への移行に全社的な後ろ盾が生まれます。ADKARでいう「意欲」や「定着」を支える体制です。

この事例から個人・現場が学べる実践の順番

kubellは企業規模の取り組みですが、考え方は個人や小さなチームにも応用できます。ポイントは、AIを使う前に自分の業務を整理する順番です。

まず「捨てられる業務」を洗い出す

AI活用を考えるとき、多くの人は「AIで何ができるか」から入ります。順番を逆にして、「この業務はそもそも必要か」から始めると、適用先が絞り込めます。

具体的には、次の手順で自分の業務を見直せます。

  • 毎週繰り返している作業をすべて書き出す
  • やめても誰も困らない作業に印をつける
  • 残った作業のうち、定型的で判断の少ないものを選ぶ
  • その作業からAIを試す

「使わせる」仕組みまで考える

ツールを用意しても、使い方が分からなければ現場は動きません。ADKARが示すように、認知と意欲をつくる働きかけが必要です。

チーム単位であれば、成功した小さな事例を共有する、うまくいった人の手順を見える化する、といった地道な定着策が効きます。AIの導入は一度で終わる作業ではなく、定着するまで続ける活動だと捉えることが、kube-AIの設計思想から読み取れる実践知です。

月200時間という数字は採用部門という特定の条件での成果です。同じ削減が自部署でそのまま再現されるとは限りません。自分の業務量や作業の性質に合わせて、小さく試して検証する姿勢が現実的です。

この記事のまとめ

kubellのkube-AIが示したのは、AI活用を成果につなげる順番でした。ツールを配る前に不要業務を捨て、変革管理の視点で定着まで設計したことが、採用部門の月200時間削減という具体的な成果につながっています。

要するに、AIは業務整理とセットで初めて効果を発揮します。まず自分やチームの業務を棚卸しし、捨てられるものを捨ててから、残った定型作業にAIを当てる。この順番を意識するだけでも、AI活用の成果は変わってきます。気になった方は、まず今週の繰り返し作業を書き出すところから始めてみてください。

よくある質問

AI導入の前に業務を捨てるのはなぜですか?

AIは今ある業務を速くこなす道具のため、やめてよい業務に適用しても不要な作業が速くなるだけで成果につながりにくいからです。先に不要業務を洗い出すことで、AIを当てるべき業務が明確になります。

ADKARとは何ですか?

組織変革を個人の行動変化の段階として捉えるフレームワークです。Awareness(認知)、Desire(意欲)、Knowledge(知識)、Ability(能力)、Reinforcement(定着)の5段階を指し、新しいやり方が定着するまでの道筋を示します。

kubellの採用部門で月200時間削減とは具体的にどういう成果ですか?

kubellが公表している部署別の成果の一つで、採用部門における月あたりの工数削減量です。あわせてスライド生成やKPIダッシュボード作成、ナーチャリングの自動化も部署ごとに達成されたと公表されています。

個人や小さなチームでもこの考え方は使えますか?

使えます。AIで何ができるかを考える前に、自分の業務から捨てられるものを洗い出し、残った定型作業にAIを試す順番が応用できます。ただし公表された削減量がそのまま再現されるわけではないため、小さく試して検証することが現実的です。

参考文献

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