観光コンテンツ事業を展開するエクスペリサス株式会社では、社内アンケートに回答した非エンジニア職の53%がAIエージェント「Claude Code」を日常的に活用しています。しかもその69%が「同じ成果物にかかる時間が半分以下になった」と回答しました。この記事では、個人が見つけたAIの使い方を会社全体の資産に変える仕組みと、自分の職場で再現するための考え方を具体的な数値とともに整理します。
エクスペリサスのClaude Code全社導入で起きたこと
結論から言えば、同社の取り組みの核心は「AIを導入したこと」ではなく、一人の工夫を全社で再利用できる形にしたことにあります。
59名を対象にした全社導入の規模
エクスペリサスは、社員・業務委託メンバーを合わせた計59名を対象に、AIエージェント「Claude Code」を全社導入しました。2026年7〜8月には全社研修も実施しています(出典:財経新聞「エクスペリサス、Claude Codeを全社導入、社員作成の業務スキル700件超を社内共有」)。
Claude Codeは、もともとプログラマー向けに設計されたAIエージェント(指示に沿って一連の作業を自動で進めるAI)です。それを観光コンテンツ事業という非開発領域の全社員に広げた点が、この事例の特徴です。
743件のスキルと127体の業務別エージェント
導入の成果は、登録された「資産」の数に表れています。
- 2026年8月末時点で、45名が743件のスキルを登録
- あわせて127体の業務別AIエージェントを登録
ここで言う「スキル」とは、AIが実行できる手順書のことです。たとえば「この形式の報告書を、この項目順でまとめる」といった業務の段取りを、AIが読み取れる形で書き起こしたものを指します。
一人が作った手順書を社内で共有すれば、他の社員は同じ作業をゼロから教える必要がなくなります。743件という数は、それだけ多くの「使い方の発見」が個人の中に埋もれず、組織に蓄積されたことを示しています。
非エンジニアの53%が日常活用したという数字の意味
AI導入の効果を測る指標は「導入したかどうか」ではなく「現場で使われ続けているかどうか」です。この点でエクスペリサスの数字は参考になります。
回答率86%のアンケートが示す定着度
研修後に実施された社内アンケートは、対象59名のうち有効回答51名、回答率86%でした。そのうえで非エンジニア職の53%が日常的にClaude Codeを活用していると回答しています(出典:財経新聞、同上)。
この「非エンジニア職の53%」という点が重要です。開発職であればAIツールを使いこなすのは比較的自然ですが、報告書作成や企画など非開発業務の担当者の半数以上が日常的に使っているというのは、ツールが特定の人に偏らず広がったことを意味します。
69%が「成果物の時間が半分以下」と回答
さらに、活用している非エンジニア職のうち69%が「同じ成果物にかかる時間が半分以下になった」と回答しました。
つまり、使っている人の約7割が明確な時間短縮を実感しているということです。AI活用でよくある「触ってはみたが続かない」状態を越えて、業務時間に直接効いているのがわかります。
個人のAI活用を「会社の資産」に変える設計
この事例から読み取れる最大の学びは、AI活用を個人の器用さに任せず、再利用できる仕組みにした点です。自分の職場で考えるときのヒントを整理します。
なぜ「スキルの共有」が効くのか
多くの職場では、AIをうまく使う人と使えない人の差が開いています。原因の一つは、便利な使い方が個人の頭の中やチャット履歴に閉じていることです。
エクスペリサスのように手順書として登録し共有すれば、以下のような変化が生まれます。
- 得意な人の工夫を、苦手な人がそのまま呼び出せる
- 新しく入った人への引き継ぎが早くなる
- 「この業務はこの手順」という社内の標準が育つ
要するに、AI活用のうまさを個人の才能から組織の仕組みへ移し替えることが、定着と効果の鍵になります。
自分の職場で試す3つのステップ
全社導入のような規模でなくても、個人や小さなチーム単位で始められます。
- 自分が繰り返している業務を1つ選び、手順を文章で書き出す
- その手順をAIに渡し、同じ成果物が作れるか試す
- うまくいった手順をチーム内で共有し、他の人にも使ってもらう
最初から完璧な手順書を目指す必要はありません。まず一つの業務で「自分以外も使える形」にできるかを試すことが、組織全体への第一歩になります。
リスキリングの視点で見ると何が変わるか
個人のキャリアという観点では、この事例は「AIに仕事を奪われる」という話とは逆の示唆を与えます。
評価されやすいのは、AIを使える人そのものより、自分の業務知識をAIが使える手順に翻訳できる人です。業務の段取りを言語化し、他者が再利用できる形に整える力は、職種を問わず価値が高まっていくと考えられます。
この記事のまとめ
エクスペリサスの事例が示したのは、AI導入の成否を分けるのは「使い方の発見を個人で終わらせず、組織で再利用できる形にすること」だという点です。おさらいします。
- 59名への全社導入で、45名が743件のスキルと127体の業務別AIエージェントを登録した
- 回答率86%のアンケートで、非エンジニア職の53%が日常的に活用していた
- 活用している非エンジニア職の69%が「成果物の時間が半分以下」と回答した
- 効果の源泉は、個人の工夫を手順書として共有し、会社の資産にした設計にある
まず自分の繰り返し業務を一つ選び、手順を書き出してAIに渡すところから始めてみてください。うまくいった手順をチームで共有できれば、個人のスキルが職場全体の生産性につながっていきます。
よくある質問
Claude Codeはエンジニアでないと使えませんか?
もともとプログラマー向けに設計されたツールですが、エクスペリサスの事例では非エンジニア職の53%が日常的に活用しています。報告書作成や企画など、開発以外の業務でも使われており、職種を問わず活用の余地があります。
「スキル」と「AIエージェント」は何が違うのですか?
スキルはAIが実行できる手順書で、特定の作業の段取りを書き起こしたものです。業務別AIエージェントは、その手順を組み合わせて特定業務を担当させる設定を指します。エクスペリサスでは743件のスキルと127体のエージェントが登録されています。
導入すれば誰でも作業時間が半分になりますか?
いいえ。「成果物の時間が半分以下」と回答したのは、活用している非エンジニア職のうちの69%です。全社員の数値ではなく、使い続けている人に限った実感値のため、導入だけで誰もが同じ効果を得られるわけではありません。
小さな会社や個人でも同じことができますか?
全社導入でなくても、個人やチーム単位で始められます。繰り返している業務の手順を文章で書き出し、AIに渡して同じ成果物が作れるか試すところから始めると、無理なく再利用できる形に近づきます。
関連記事





コメント