賃金は34年ぶりの伸び、それでも格差が広がる本当の理由

賃金は34年ぶりの伸び、それでも格差が広がる本当の理由

「給料が上がっている」というニュースを見ても、自分の実感とはズレていませんか。厚労省の最新統計では賃金が34年ぶりの高い伸びを示す一方、その恩恵は大企業・大都市圏に偏っています。この記事では、賃金統計の中身を読み解き、中堅層や地方で働く人が市場価値を高めるために何をすべきかを整理します。

目次

賃金は34年4カ月ぶりの高い伸びを記録した

まず事実から確認します。厚生労働省の毎月勤労統計調査2026年7月分速報によると、労働者1人あたりの現金給与総額(規模5人以上)は436,401円、前年同月比4.7%増となりました。6カ月連続で3%以上の伸びを記録したのは34年4カ月ぶりの水準です。

数字が示す「久しぶりの好調」

現金給与総額とは、基本給に残業代や賞与などを加えた、税金や社会保険料を引く前の給与の総額を指します。今回の統計では、この総額の伸びが目立ちました。

  • 現金給与総額(規模5人以上)は436,401円、前年同月比4.7%増(厚労省毎月勤労統計調査2026年7月分速報)
  • フルタイムで働く一般労働者の現金給与総額は578,123円、4.7%増。6カ月連続で3%以上の伸びは1994年1月の調査開始以来はじめて
  • 物価の影響を除いた実質賃金指数は117.6、前年同月比2.4%増で7カ月連続のプラス

とくに注目したいのが実質賃金です。実質賃金とは、名目の給与から物価変動の影響を差し引いた「実際に買える量」を反映した指標を指します。物価高が続くなかで7カ月連続のプラスという点は、生活実感の改善につながりうる材料です。

見出しの数字だけでは判断できない理由

統計上の平均はあくまで「全体をならした値」です。自分の給与がその平均どおりに伸びているとは限りません。平均の上昇と個人の実感がズレる背景には、後述する格差の拡大があります。

平均賃金が上がっているという報道は事実です。ただし、平均という数字は高い人と低い人を合算してならしたものです。要するに、一部の層が大きく伸びれば、多くの人が横ばいでも平均は上がって見えます。

賃金の伸びは大企業・大都市圏に偏っている

好調な統計の裏側で、伸び方の格差が広がっています。SBI金融経済研究所の分析によれば、賃金の伸び率のばらつきは2023年以降に拡大へ転じ、2024年には2006年の水準を上回りました。

格差の主因は「企業規模」と「地域」

同研究所の分析では、賃金の伸びのばらつきが広がった要因の大部分は、企業規模の間の差と地域の間の差にあると指摘されています。つまり、どの規模の会社で、どの地域で働くかによって、賃上げの実感が大きく分かれているということです。

  • 賃金伸び率の分散は2023年以降に拡大し、2024年には2006年の水準を上回る(ESRI/SBI金融経済研究所の分析)
  • ばらつき拡大の要因の多くは「企業規模間」と「地域間」の格差
  • 大都市圏の大企業に賃上げが偏り、中小企業・地方との差が広がっている

中堅層で賃金の伸びが鈍る傾向

もう一つ見逃せないのが、勤続年数による違いです。SBI金融経済研究所の分析では、勤続10年以上25年以下の中堅層で、勤続に伴う賃金の伸びが鈍化する傾向があるとされています。

勤続を重ねれば自動的に給与が上がる、という前提が崩れつつあります。中堅層ほど「会社に居続けること」だけでは賃金が伸びにくくなっている可能性があり、自分の市場価値を意識した行動が求められます。

長く勤めれば賃金が上がるという年功的な仕組みは、かつてほど機能していないと考えられます。中堅層こそ、社内での経験に加えて、市場で評価されるスキルを持っているかどうかが問われる局面に入っています。

格差の時代に個人ができる3つの行動

平均賃金の上昇を待つのではなく、自分の伸び率を自分で高める視点が重要です。ここでは、統計から読み取れる示唆をもとに、今日から検討できる行動を3つ整理します。

自分の賃金を「属性」で相対化する

最初のステップは、自分の給与を平均と比べるだけで終わらせないことです。企業規模・地域・勤続年数という3つの属性に分けて、自分がどのグループに属しているかを把握します。

  • 勤め先の企業規模(大企業か中小企業か)
  • 働いている地域(大都市圏か地方か)
  • 勤続年数と、この数年の昇給ペース

この3点を書き出すだけで、自分の賃金が「伸びやすい側」なのか「伸びにくい側」なのかが見えてきます。伸びにくい側にいると分かった場合こそ、次の一手が意味を持ちます。

市場で評価されるスキルに投資する

賃金の伸びが企業規模や地域に左右されるなら、その枠を超えて評価される能力を持つことが有効な対策になります。リスキリング(学び直し)は、勤続年数に頼らず市場価値を高める手段として位置づけられます。

  • 需要が続く分野(データ活用・デジタル関連など)のスキルを一つ選ぶ
  • 資格や実務経験など、社外でも証明できる形にする
  • 学んだ内容を現職の業務で試し、実績として積み上げる

ここで大切なのは、学ぶこと自体をゴールにしないことです。習得したスキルを、現職での成果や副業、あるいは転職といった形で「賃金の伸び」に接続する設計まで含めて考えます。

伸びている場に身を置く選択肢も持つ

現在の勤め先で賃金が伸びにくいと判断した場合、働く場を変えることも選択肢に入ります。ただし、これは焦って動くという意味ではありません。統計を踏まえれば、賃上げが起きやすい企業規模・地域・業種を見極めたうえで検討することが現実的です。

要するに、格差が広がる局面では「どこで働くか」と「何ができるか」の両方が賃金を左右します。片方だけでなく、両輪で自分の状況を点検することが、統計の平均値に振り回されないための構えになります。

この記事のまとめ

賃金は34年4カ月ぶりの高い伸びを見せ、実質賃金も7カ月連続でプラスになりました。これは前向きな事実です。一方で、その伸びは大企業・大都市圏に偏り、中小企業・地方・中堅層との格差が広がっていることもデータが示しています。

  • 賃金統計の平均上昇と個人の実感がズレるのは、伸び方の格差が背景にある
  • 格差の主因は企業規模と地域。勤続10年以上25年以下の中堅層は伸びが鈍る傾向
  • 自分の属性を相対化し、市場で評価されるスキルへ投資することが有効な対策になる

平均が上がっているかどうかより、自分の伸び率をどう高めるかに視点を移すことが出発点です。まずは自分の給与を企業規模・地域・勤続年数の3つの属性で整理し、伸ばせるスキル領域を一つ選ぶところから始めてみてください。

よくある質問

実質賃金がプラスなら、生活は楽になっているのですか?

実質賃金がプラスというのは、平均で見れば物価の上昇を給与の伸びが上回っている状態を示します。ただしこれは全体をならした平均値です。厚労省の統計でも伸びは大企業・大都市圏に偏っているため、勤め先や地域によっては実感が伴わない場合があります。自分の給与の伸びが物価上昇に追いついているかは、個別に確認する必要があります。

なぜ平均賃金が上がっても自分の給料が上がらないのですか?

平均は高い人と低い人を合算してならした数字だからです。SBI金融経済研究所の分析では、賃金の伸びのばらつきが2023年以降に拡大しており、その要因の多くは企業規模間・地域間の格差だとされています。一部の大企業・大都市圏で大きく伸びれば、多くの人が横ばいでも平均は上昇して見えます。

中堅層は昇給が鈍りやすいというのは本当ですか?

SBI金融経済研究所の分析では、勤続10年以上25年以下の中堅層で、勤続に伴う賃金の伸びが鈍化する傾向が指摘されています。長く勤めれば自動的に賃金が上がるという前提が弱まりつつあるため、中堅層ほど市場で評価されるスキルを持っているかが重要になると考えられます。

賃金格差の時代に、まず何から始めればよいですか?

自分の給与を「企業規模・地域・勤続年数」の3つの属性で整理することから始めるのがおすすめです。そのうえで、勤続年数に頼らず市場で評価されるスキル領域を一つ選び、資格や実務実績など社外でも証明できる形にしていくと、賃金の伸びにつなげやすくなります。

関連記事

あわせて読みたい
転職で賃金1割以上増えた人は45.6%|2026年4〜6月期データの読み方 「転職すれば年収は上がるのか」——この問いに、直近の数字はひとつの目安を示しています。リクルートエージェントの集計では、2026年4〜6月期に前職より賃金が1割以上増...

あわせて読みたい
IT人材の45%が「静かな退職」|転職で年収UPは約6割の実態 「頑張っても給与に反映されない」と感じて、必要以上に力を注ぐのをやめる。そんな「静かな退職」の兆候を、IT人材の約45%が自覚しているという調査結果が出ました。一...

あわせて読みたい
転職で年収アップは64.1%、平均109万円増|異業種でも6割超の実態 「転職すると年収が下がるかもしれない」。その不安で一歩を踏み出せずにいる人は少なくありません。ですが、直近のデータは逆の傾向を示しています。転職サービスdoda...

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

目次