「AI活用は大手IT企業の話」と感じていませんか。教育・介護事業を全国約500拠点で展開する京進グループは、現場の社員が自分で業務アプリを作る方式で、年間約5600時間の業務削減効果を試算しました。この記事では、非IT業界でもAIで成果を出した具体的な中身と、自分の職場で応用するための考え方を整理します。
京進が試算した「年間5600時間」の中身
京進グループが発表した削減効果は、年間約5600時間です。これは、AI開発プラットフォーム「Dify(ディファイ)」を使って作った2つのアプリを運用した結果として試算された数字です。Difyとは、プログラミングの専門知識が浅くても、画面上の操作を中心に生成AIを組み込んだアプリを作れるツールを指します。
この数字が注目されるのは、発表元が大手IT企業ではない点にあります。京進グループは教育・介護を主力とする事業グループで、連結従業員は2,195名、拠点は全国約500に及びます。ITが本業ではない組織が、現場発の取り組みで時間削減の効果を試算した事例です。
削減効果を生んだ2つのアプリ
5600時間という試算は、次の2つのアプリの運用から導かれています。
- 面談内容を録音し、音声を解析して整理する面談録音アプリ
- 社内の問い合わせに答える社内FAQボット
「時間」がコストに直結する理由
削減された時間は、単なる作業の短縮ではありません。面談記録の作成や問い合わせ対応は、本来であれば指導や相談といった人にしかできない業務に充てられるはずの時間です。定型業務をAIに任せ、人の時間を本業へ戻すという発想が、この試算の背景にあります。
コストを10分の1に下げた具体策
京進の発表でもう一つ具体的なのが、コスト構造の改善です。面談録音アプリの音声解析にかかる費用を、1分あたり約1円から約0.1円へ、およそ10分の1に下げたと示されています。
音声解析モデルの最適化とは
コスト削減の手段は、音声解析に使うモデルの最適化です。生成AIのサービスは、処理する量に応じて費用が発生します。面談のように録音時間が積み重なる用途では、1分あたりの単価が全体のコストを大きく左右します。京進は、用途に見合ったモデルや設定を選び直すことで、単価を1桁下げました。
導入して終わりにしない運用の視点
ここで押さえておきたいのは、AIは導入すればコストが自動的に下がるわけではないという点です。むしろ使い方次第で費用はふくらみます。京進の事例は、導入後に単価や設定を見直し続ける運用があって初めて成果につながることを示しています。
非IT業界でも成果が出た「市民開発」という発想
この事例で最も応用しやすいのは、現場の社員が自らアプリを作る「市民開発」という進め方です。市民開発とは、専任のエンジニアではない業務部門の社員が、ノーコードやローコードのツールを使って自分たちの業務アプリを作ることを指します。
現場が作るからこそ業務に合う
情報システム部門がすべてのアプリを作ろうとすると、現場の細かい事情まで拾いきれず、開発も後回しになりがちです。面談記録や問い合わせ対応のように、現場の実務を知る人ほど「どこに時間がかかっているか」を理解しています。その人自身が作り手になることで、実務に合ったアプリが生まれやすくなります。
個人のリスキリングにつながる3つの視点
京進のような動きは、会社だけの話ではありません。働く個人にとっても、身につけておく価値のあるスキルの方向性を示しています。
- 自分の業務のどこに時間がかかっているかを洗い出す力
- DifyのようなAIツールで小さな仕組みを試作する力
- 導入後のコストや精度を継続的に見直す運用の視点
これらは特定の職種に限らず、教育・介護・事務など幅広い現場で通用する力です。AIを使う側のスキルは、業種を問わず自分の市場価値を支える土台になります。
この記事のまとめ
京進グループの事例は、AI活用が一部のIT企業だけの取り組みではないことを、具体的な数字で示しました。要点を振り返ります。
- Difyを使った2つのアプリで年間約5600時間の業務削減効果を試算した
- 音声解析のコストを1分あたり約1円から約0.1円へ下げた
- 現場の社員が自ら作る「市民開発」が成果の鍵になっている
まず試せるのは、自分の業務のうち「時間はかかるが付加価値を生みにくい作業」を1つ書き出してみることです。そこがAIで置き換えられる余地のある領域かもしれません。Difyのようなツールに関心があれば、公式サイトで無料で試せる範囲から触れてみると、自分の業務に当てはめやすくなります。
よくある質問
Difyはプログラミングができなくても使えますか?
Difyは画面上の操作を中心に生成AIを組み込んだアプリを作れるツールで、専門的なコードを書かなくても試作できる設計です。ただし、どんな業務を自動化したいかを整理する力や、導入後に設定を見直す運用の視点は必要です。まったく知識ゼロでも成果が出るとは限らない点には留意してください。
年間5600時間という数字は自分の会社でも再現できますか?
これは全国約500拠点・連結従業員2,195名という京進グループの規模で試算された数値です。組織の規模や業務量が異なれば削減効果も変わるため、そのまま当てはまる数字ではありません。自社の場合は「1件あたりどれだけ時間がかかっているか」から積み上げて考えるのが現実的です。
教育や介護のような非IT業界でもAI活用は進められますか?
京進の事例は、まさに教育・介護事業のグループが現場発でAIアプリを作って成果を試算したものです。本業がITでなくても、現場の社員が業務に合った小さな仕組みから始める市民開発の進め方なら、業種を問わず取り組める可能性があります。
個人がこうしたAIスキルを身につけるには何から始めればよいですか?
まずは自分の日々の業務のうち、定型的で時間のかかる作業を洗い出すところからです。そのうえで、ノーコードのAIツールを無料の範囲で触り、小さな自動化を試してみると、実務に即したスキルが身につきやすくなります。
参考文献
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