「経理の仕事はAIに向いていない」。そう感じている方は少なくありません。ところが、契約書の判定に1件3時間かかっていた業務を、AIで2分に短縮した経理チームがあります。JBCCグループの事例です。この記事では、AIに後ろ向きだった現場が意識を変えた経緯と、失敗から学んだ「AIの使いどころ」の見つけ方を、経理以外の職種でも応用できる形で整理します。
経理チームが契約書判定を3時間から2分にした事例
まず結論から言うと、JBCCグループの経理チームは、契約書の判定業務を1件あたり3時間から2分へ短縮し、効率化率99%を実現しました(出典:ITmedia「『経理がAI活用なんて、無理』→『作業を99%効率化』」2026年9月17日)。
きっかけは2027年4月適用の新会計基準
この取り組みの背景には、2027年4月に適用が始まる「新リース会計基準」への対応があります。新リース会計基準とは、企業が結ぶリース契約(設備や不動産などを借りる契約)の会計処理ルールを見直す新しい基準のことです。
対応にあたっては、大量の契約書を1件ずつ確認し、新基準の対象になるかを判定する作業が必要になります。この判定こそが、1件3時間という重い負担の正体でした。
「AI活用は無理」という現場の空気
注目したいのは、この経理チームがもともとAI活用に前向きだったわけではない点です。記事のタイトルにもある通り、現場には「経理がAI活用なんて、無理」という空気がありました。
AIへの「丸投げ」はなぜ失敗したのか
意識改革の出発点は、実は一度の失敗でした。ここが、これからAIを業務に取り入れたい人にとって最も参考になる部分です。
最初の試みは「全部読ませる」だった
経理チームが最初に試したのは、AIに会計基準と契約書をすべて読み込ませ、判定まで任せる方法でした。いわゆる「丸投げ」です。しかし、この方法はデータ量が多すぎて失敗に終わりました(出典:同ITmedia記事)。
AIは大量の情報を一度に渡されると、どこに注目すべきかを見失いやすくなります。人間なら「ここが重要」と自然に取捨選択できる部分でも、指示があいまいなまま情報だけ増えると精度が下がります。
「AIに任せれば楽になる」という誤解
ここでよくある誤解を1つ訂正しておきます。「高性能なAIに丸ごと渡せば、あとは勝手にやってくれる」という考え方です。
実際には、任せる範囲と手順を人間が設計しなければ、AIは力を発揮しません。つまり、AI活用のスキルとは「操作を覚えること」以上に、業務を分解して任せどころを見極める力だと言えます。
成功の鍵は「業務を分解して任せどころを絞る」こと
失敗の後、経理チームはアプローチを変えました。この転換が99%の効率化につながっています。
9ステップに分解し、AIが得意な3つに絞った
チームが取ったのは、判定業務を9つのステップに分解する方法でした。そのうえで、AIが得意とする「集約・要約」にあたる3ステップだけをAIに任せたのです(出典:同ITmedia記事)。
残りのステップは人間が担当します。判断や責任が伴う部分は人が持ち、情報を集めて整理する定型的な部分をAIに渡す。この役割分担が精度と効率を両立させました。
- 業務全体を細かい工程に分解する
- 各工程を「AIが得意/人間が得意」で仕分けする
- 集約・要約など定型的な工程だけをAIに任せる
- 判断・責任が伴う工程は人間が担当する
実用化まで1〜2カ月
この進め方により、経理チームは1〜2カ月で実用レベルに到達しました(出典:同ITmedia記事)。大規模なシステム開発ではなく、自分たちの業務を分解して小さく試したことが、短期間での実現につながっています。
この事例から学べるリスキリングの実践知
この事例は経理の話ですが、得られる教訓はどの職種にも当てはまります。要するに、AI時代に求められるのは「AIに置き換えられない人」ではなく「AIの使いどころを設計できる人」だということです。
自分の業務を分解してみる
まず取り組めるのは、自分の日々の業務を工程に分解してみることです。「この作業は何ステップに分かれているか」「そのうち集約や要約にあたる部分はどこか」を書き出すだけでも、AIに任せられる箇所が見えてきます。
- 定型的で繰り返しが多い作業
- 大量の情報を集めて整理する作業
- 一定のルールで要約・分類できる作業
これらはAIが力を発揮しやすい領域です。逆に、最終判断や対外的な責任を伴う部分は人間が持つ、という線引きを意識すると設計しやすくなります。
「使いどころの設計力」がこれからの武器になる
経理のように専門性の高い職種でも、業務分解というアプローチでAIを取り入れられました。特別なプログラミング知識ではなく、自分の仕事を理解し、任せどころを見極める視点が起点になっています。
この「使いどころの設計力」は、業種や職種を問わず応用できるリスキリングのテーマです。ツールの操作習得と並行して、日々の業務を分解する習慣を持つことが、AI時代のキャリアを支える土台になります。
この記事のまとめ
JBCCグループの経理チームは、AIへの丸投げという失敗を経て、業務を9ステップに分解し、AIが得意な3つに絞ることで契約書判定を3時間から2分へ短縮しました。ここから見えてくるのは、次のポイントです。
- AIへの丸投げは情報過多で失敗しやすい
- 業務を分解し、集約・要約などAIが得意な工程に絞ると効果が出る
- 判断・責任を伴う工程は人間が担当する役割分担が鍵
- 小さく試すことで1〜2カ月でも実用化にたどり着ける
AI活用に不安を感じているなら、まずは自分の業務を工程に分解し、どこがAIに向いているかを書き出すところから始めてみてください。それが、意識改革の最初の一歩になります。
よくある質問
経理のような専門職でもAIは活用できますか?
この事例では、専門性の高い経理業務でAIを活用し、契約書判定を99%効率化しています。ポイントは業務全体をAIに任せることではなく、集約・要約など定型的な工程に絞って任せることです。判断や責任を伴う部分は人間が担う役割分担が前提になります。
AIに業務を丸ごと任せるのはなぜうまくいかないのですか?
JBCCグループの経理チームも、最初は会計基準と契約書をすべてAIに読み込ませる「丸投げ」を試みましたが、データ量が多すぎて失敗しました。AIは一度に多くの情報を渡されると注目すべき点を見失いやすいため、任せる範囲と手順を人間が設計する必要があります。
AI活用のスキルを身につけるには何から始めればよいですか?
まずは自分の日々の業務を工程に分解し、「集約・要約など定型的な部分はどこか」を書き出すことがおすすめです。この事例でも、業務を9ステップに分けてAIが得意な3つを見極めたことが成功につながりました。ツールの操作習得より、使いどころを設計する視点が起点になります。
短期間でもAI活用の成果は出せますか?
この事例では、業務を分解して小さく試す進め方により、1〜2カ月で実用レベルに到達しています。大規模なシステム開発を前提にせず、業務の一部から始めることが、短期間で成果を出すための現実的な方法です。
関連記事





コメント