「採用が増えている」という報道を見て転職に前向きになった方も多いかもしれません。ただ、実際の企業側の本音は少し違います。マンパワーグループの最新調査では、日本企業の雇用意欲はたしかに改善したものの、6割超が「現状維持」を選んでいました。この記事では、2026年10〜12月期の雇用予測データを読み解き、転職を考える人がどの業種・どのタイミングで動くべきかを整理します。
日本企業の雇用意欲は「改善したが低水準」
まず結論から言うと、日本の採用意欲は前より上向いたものの、力強い増加には至っていません。
マンパワーグループが東京・大阪・名古屋の1,036社を対象に実施した2026年第4四半期(10〜12月期)の調査によると、日本の純雇用予測は+7%でした。前四半期比では+2ポイントの改善ですが、前年同期比では-6ポイントと、1年前より落ち込んでいます(出典:マンパワーグループ調査)。
「純雇用予測」とは、増員を予定する企業の割合から減員を予定する企業の割合を差し引いた数値です。プラスであれば採用市場全体としては拡大傾向にあることを示します。
「増員予定」はわずか20%、6割超は「変化なし」
数字以上に注目したいのが、企業の回答の内訳です。
- 増員予定:20%
- 変化なし:64%
- (グローバル平均では増員予定が43%)
出典:マンパワーグループ 2026年第4四半期雇用予測調査
日本企業の3社に2社が「今の人員のまま」と答えている計算です。つまり「採用が活発化している」という印象と、現場の実態にはギャップがあります。転職市場全体が一様に開いているわけではない、という前提を持っておくことが大切です。
世界の採用意欲との差は依然として大きい
日本の+7%という数字は、世界の水準と比べると見え方が変わります。
42カ国・地域を対象としたグローバル平均の純雇用予測は+29%、アジア太平洋・中東地域にいたっては+33%でした(出典:マンパワーグループ調査)。日本はこれらを大きく下回っており、国際的に見れば採用意欲は低い部類に入ります。
なぜ日本は動きが鈍いのか
調査では、日本企業の多くが人手不足を抱えながらも、事業・職種ごとの人員配置を慎重に見極めようとしている姿勢が指摘されています。9業種のうち8業種で増員予定があるにもかかわらず、人手不足そのものは解消していません。
要するに、「必要な場所に、必要なスキルの人を配置したい」という選別が進んでいるということです。単純な頭数の増員ではなく、スキルや職種を絞った採用へと移りつつあると読み取れます。
この流れは、転職を考える個人にとって重要な意味を持ちます。「経験が浅くても人手不足だから採用される」という時代の見立ては、少しずつ通用しにくくなっているのです。
伸びている業種を見極める:情報サービスが+21%
採用意欲に業種差がある以上、どの業界を狙うかで転職のしやすさは変わります。
今回の調査で最も高い純雇用予測を示したのは情報サービス業の+21%でした(出典:マンパワーグループ調査)。日本全体の+7%を大きく上回っており、採用ニーズが相対的に強い分野だと分かります。
ただし「情報サービスも減速している」点に注意
一方で、情報サービス業の+21%は前四半期比で-2ポイント、前年同期比で-4ポイントと、伸びは鈍化しています。勢いが最も強い業種でさえ、1年前よりは採用意欲が下がっているわけです。
だからこそ、業種を選ぶと同時に「その業種で通用するスキルをどう身につけるか」をセットで考える必要があります。IT・データ関連のスキルを学び直す(リスキリング)ことは、伸びている業種の間口を自分側から広げる手段になります。
業種選びで確認したい3つの視点
転職先の業種を絞り込むとき、次の点をチェックすると判断しやすくなります。
- 採用意欲が業界平均より高いか(純雇用予測などの調査データで確認)
- その伸びが加速しているか、鈍化しているか(前年比・前期比を見る)
- 自分の現スキルと、その業種で求められるスキルの差はどの程度か
転職を考える人が今取るべき3つの動き
雇用予測が「改善したが低水準」という局面では、闇雲に動くより準備を整えるほうが結果につながりやすくなります。
情報を「平均」ではなく「業種別」で見る
「採用は増えている/減っている」という全体の話だけを見て判断しないことが第一歩です。今回のように、全体は+7%でも情報サービスは+21%と、業種によって温度差があります。志望する業界の採用意欲を個別に調べる習慣をつけましょう。
需要が強い分野のスキルを先に固める
採用が選別型に移っている以上、応募前にスキルの裏づけを用意しておくと有利です。特にデータ・IT・AI活用など、複数業種で共通して求められるスキルは、業種をまたいで持ち運べる強みになります。
「現状維持」の会社にいるなら社内でも動く
転職市場が慎重ムードのときは、無理に外へ出るより、まず社内で経験の幅を広げる選択も現実的です。増員予定が20%にとどまる環境では、いま在籍する会社で成果とスキルを積み上げておくことが、次の転職での交渉材料になります。
この記事のまとめ
2026年10〜12月期の雇用予測は+7%と前期より改善したものの、日本企業の64%は「現状維持」を選び、世界平均の+29%とは大きな差が残りました。採用は頭数を増やす段階から、スキルと職種を選ぶ段階へと移りつつあります。
- 採用意欲は業種で大きく異なる。情報サービスは+21%と相対的に高い
- ただし伸びている業種でも減速傾向。スキルの裏づけがより重要に
- 全体平均ではなく志望業種のデータを見て、動くタイミングを判断する
転職を具体的に考え始めたら、まずは志望する業種の求人動向を個別に調べ、その分野で求められるスキルと自分の現状の差を確認するところから始めてみてください。
よくある質問
純雇用予測+7%とは、転職しやすいということですか。
採用市場全体としては拡大方向にあることを示しますが、日本企業の64%が「現状維持」と回答している点には注意が必要です。数字はプラスでも、増員を予定する企業は20%にとどまります。全体が上向きでも、業種や職種によって採用のしやすさは大きく異なると考えたほうが実態に近いです。
転職するなら情報サービス業が狙い目ですか。
今回の調査では情報サービス業の純雇用予測が+21%と最も高く、相対的に採用ニーズが強い分野です。ただし前年同期比では-4ポイントと伸びは鈍化しており、求められるスキルを満たしているかがより重視されます。業種の勢いだけでなく、自分のスキルがその業種で通用するかをあわせて確認することをおすすめします。
日本の採用意欲が世界より低いのはなぜですか。
調査では、多くの日本企業が人手不足を抱えつつも、事業・職種ごとの人員配置を慎重に見極めようとしている姿勢が指摘されています。9業種中8業種で増員予定がある一方、単純な増員ではなく、必要なスキルを持つ人材を選んで採用する傾向が強まっていると読み取れます。
今は転職を待ったほうがよいのでしょうか。
一律に「待つべき」とは言えません。採用が選別型に移っている局面では、応募前にスキルの裏づけを固めておくほど有利になります。現職が「現状維持」の環境なら、社内で経験の幅を広げながら、志望業種の求人動向を見て動くタイミングを計るのが現実的な進め方です。
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