同じ国の中でも、就職しやすい地域と、しにくい地域がはっきり分かれています。求人サイトIndeedの調査部門Indeed Hiring Labが2026年8月25日に公表した新しい指標では、アラスカ州ジュノーの求人数がコロナ禍前の約2倍に増えた一方、ロサンゼルスとデンバーは同じ期間に約20%減りました。この記事では、この「地域による労働市場の格差」が何を意味するのか、そして日本で働く私たちが「働く場所」をどう考えるヒントになるのかを整理します。
米労働市場を「地域」で切り取る新しい指標
これまで米国の雇用を語るとき、多くは「業種」の軸で語られてきました。IT業界は冷え込み、医療・介護は人手不足、といった具合です。今回Indeed Hiring Labが持ち込んだのは、それとは別の「地域」という切り口です。
800以上の都市圏を「タイト」と「スラック」で測る
Indeed Hiring Labは、全米800以上の都市圏・小都市圏を対象に、労働市場の逼迫度(ひっぱくど=需要と供給のバランス)を測る新しい指数を開発しました。逼迫度とは、求人(企業が人を欲しがる度合い)と求職(人が仕事を探す度合い)のどちらが強いかを示すものです。
この指数では、労働市場を大きく2つの状態に分けています。
- タイト(人手不足):企業が採用したくても人が足りない状態
- スラック(求人不足):働きたい人に対して求人が足りない状態
同じ「アメリカの雇用」といっても、住む場所によってこの状態が正反対になっている、というのが今回の調査の核心です。
地域差はどれくらい大きいのか
具体的な数字を見ると、その差の大きさがわかります。
- アラスカ州ジュノー:求人数が2020年初頭のおよそ2倍に増加
- ロサンゼルス・デンバー:同じ期間に求人数が約20%減少
出典:Indeed Hiring Lab「Labor Market Tightness」2026年8月25日
一方は求人が倍増し、もう一方は2割減っています。国全体の平均値だけを見ていては、この明暗はまったく見えてきません。
なぜ地域によって明暗が分かれるのか
興味深いのは、「求人が少ない地域」であっても、その理由が地域ごとに違うという点です。原因が違えば、求職者が取るべき対応も変わります。
人手不足の地域:人口減少が背景
Indeed Hiring Labによると、ニューイングランド地方(米国北東部)や中西部北部は、タイト(人手不足)の傾向が強い地域です。その背景にあるのは、高齢化と人口減少による労働力供給の細りだと説明されています。
つまり、景気が良くて求人が増えたというより、働く人そのものが減ったために「人手不足」に見えている、という構造です。これは日本の地方が抱える課題とも重なります。
求人が少ない地域:理由は2通り
反対にスラック(求人不足)の地域も、理由が一様ではありません。
- カリフォルニア:技術系(テック)求人の需要が冷え込んだことが要因
- 南東部:求人と求職者のスキルや条件が合わない「ミスマッチ」が要因
カリフォルニアは求人の数そのものが減ったのに対し、南東部は求人はあっても人と合っていない、という違いです。同じ「仕事が見つけにくい」でも、前者は業界の景気、後者はスキルの需給が問題ということになります。
「AIによる失業」だけでは説明できない
労働市場を語るとき、近年は「AIが仕事を奪う」という論点が目立ちます。しかし今回の調査が示すのは、AIとは別に、人口動態や地域の産業構造という構造的な要因が雇用を大きく左右しているという事実です。
技術の変化だけに目を奪われると、こうした地道な需給のズレを見落としてしまいます。労働市場は、複数の要因が重なって動いていると捉えておくのが現実的です。
日本で働く私たちが受け取れる視点
これは米国の調査ですが、日本の読者にとっても「働く場所」を考える材料になります。同じスキルを持っていても、どの地域・どの市場に身を置くかで、需要のされ方が変わるからです。
「働く場所」も選択肢の一つと考える
米国の事例が示すのは、スキルの中身だけでなく、それをどこで発揮するかで評価が変わるということです。人手不足の地域では、同じ経験でも歓迎されやすくなります。
日本でも、リモートワークの普及によって「住む場所」と「働く市場」を切り離せる余地が広がりました。都市部の求人が厳しくても、人手不足の地域や職種に目を向けると状況が変わることがあります。
需給が変わっても通用するスキルを保つ
もう一つの教訓は、地域や景気で求人が増減しても揺らぎにくい、汎用的なスキルを持っておくことの大切さです。特定の業界・地域の好況だけに頼ると、その市場が冷え込んだときに選択肢を失います。
今日からできる小さな確認
大きな引っ越しやキャリアチェンジをすぐに決める必要はありません。まずは自分の立ち位置を確認するところからで十分です。
- 自分のスキルが「人手不足」の分野に近いか、「求人が飽和した」分野に近いかを調べる
- リモート可の求人で、地域を広げると選択肢がどれだけ増えるか確認する
- 特定の業界・地域に依存していないか、自分の経験を棚卸しする
この記事のまとめ
Indeed Hiring Labの新指標は、同じ国の中でも地域によって労働市場の状態が正反対になりうることを、具体的な数字で示しました。アラスカ州ジュノーで求人が倍増する一方、ロサンゼルスとデンバーでは約20%減少しています。
ポイントは、求人の増減がAIだけでなく、人口動態や地域の産業構造といった構造要因で動いているという点です。人手不足の地域は人口減少が背景にあり、求人が少ない地域も業界の冷え込みとスキルのミスマッチという別々の理由を抱えています。
この視点は、日本で働く私たちにも応用できます。スキルの中身に加えて「どこで働くか」も選択肢に入れること、そして市場が変わっても持ち運べる汎用的なスキルを保つこと。まずは自分のスキルが今どの市場で求められているのかを、求人検索から確認してみるのがおすすめです。
よくある質問
Indeed Hiring Labの労働市場逼迫度指数とは何ですか?
求人サイトIndeedの調査部門が開発した、地域ごとの労働市場が「タイト(人手不足)」か「スラック(求人不足)」かを測る指標です。全米800以上の都市圏・小都市圏を対象に、2026年8月25日に公表されました。求人と求職のバランスを地域単位で可視化する点が特徴です。
なぜ地域によって求人の増減が違うのですか?
理由は地域ごとに異なります。ニューイングランド地方や中西部北部は高齢化と人口減少による労働力の細りで人手不足になっています。一方、カリフォルニアは技術系求人の冷え込み、南東部は求人と求職者のミスマッチが原因で、それぞれ求人が少ない状態です。
この米国の調査は日本で働く人に関係ありますか?
直接の統計は米国のものですが、「働く場所によって同じスキルの評価が変わる」という視点は日本にも応用できます。リモートワークの普及で住む場所と働く市場を切り離しやすくなっており、地域や職種を広げると選択肢が変わることがあります。
求人が減った地域に住んでいる場合、どうすればよいですか?
すぐに引っ越しを決める必要はありません。まずは自分のスキルが人手不足の分野に近いかを確認し、リモート可の求人で対象地域を広げると選択肢がどれだけ増えるかを調べるのが現実的です。特定の業界・地域に依存していないか、経験の棚卸しから始めるとよいでしょう。
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