個人開発で「月いくら稼げるのか」を知りたいとき、目に入るのは月収100万円といった派手な成功談ばかりです。この記事では、海外の個人開発者(indie hacker・インディーハッカー=自分一人で製品を作り収益化する人)が自ら公開した108製品の売上データをもとに、現実的な収益の中央値と、収益を左右する要因を整理します。短期の一発逆転ではなく、地に足のついた期待値を持つための材料になります。
公開された108製品の収益、中央値は月1000ドル
海外の個人開発者がXやRedditで自発的に公開した売上を集計したサイト「shipitfaststupid.com」が、424製品のうちMRR(月次継続収益=毎月繰り返し発生する売上)を公開していた108製品を分析しました。その結果、MRRの中央値は1000ドルでした。
中央値とは、全データを小さい順に並べたとき真ん中にくる値です。平均値と違い、一部の飛び抜けた成功例に引っ張られにくいため、「ふつうの人がどのあたりにいるか」を知るのに向いています。
このデータでは中間50%の製品が月100ドルから1万ドルの範囲に収まっていました。つまり、個人開発で収益が出ている人でも、その多くは月数百ドルから数千ドルの規模ということです。
この数字をどう受け止めるか
注意したいのは、このデータが「自分から売上を公開した人」に偏っている点です。収益を公開するのは、ある程度の実績が出ている人に多い傾向があります。
つまり、ここに出てくる中央値1000ドルという数字でさえ、収益ゼロや撤退した製品を含めればもっと低くなる可能性があります。公開されている成功談は、全体のごく一部を切り取ったものだと考えておくのが安全です。
収益を分けるのは「続けた年数」だった
このデータでもっとも示唆に富むのは、運用期間による差です。製品を出してからの経過年数で、収益の中央値が大きく変わっていました。
具体的には、リリースから3ヶ月以内の製品はMRR中央値が394ドルだったのに対し、1年以上運用した製品の中央値は1万ドルでした。約25倍の開きです。
- 3ヶ月以内の製品:MRR中央値394ドル
- 1年以上運用した製品:MRR中央値1万ドル
この差は、個人開発の収益が短期間では積み上がりにくいことを示しています。ローンチ直後に大きく跳ねる例もありますが、全体で見れば、収益は時間をかけて育つものだと読み取れます。
短期で辞めると結果が出る前に終わる
多くの個人開発は、結果が出る前の数ヶ月で見切りをつけられがちです。しかしこのデータを踏まえると、3ヶ月時点の数百ドルは「失敗」ではなく、むしろ標準的な通過点と言えます。
何を作るかで到達点は変わる
収益は運用年数だけでなく、製品のカテゴリによっても差がありました。同じ個人開発でも、解決する課題によって収益化のしやすさが異なります。
データでは、営業・アウトリーチ(Sales/outreach=見込み客への営業活動を支援するツール)系がMRR中央値5000ドルで最も高く、一方で生産性向上(Productivity)系は186ドルと低い水準でした。
お金を生む現場に近いほど収益化しやすい
営業支援ツールが高収益だったのは偶然ではありません。営業は売上に直結する業務のため、効果が見えれば企業は費用を払いやすいからです。
逆に生産性ツールは、便利でも「無料の代替手段がある」「個人が自腹で払う」といった事情から、高い料金を設定しにくい傾向があります。
- 誰が料金を払うのか(個人か、予算を持つ企業か)
- その課題の解決が、相手の売上やコスト削減に直結するか
- すでに無料の代替手段が広く使われていないか
作るものを決める段階で上の3点を確認すると、収益化の難易度をあらかじめ見積もれます。これは個人開発に限らず、副業として受託や新規サービスを考えるときにも使える視点です。
この記事のまとめ
今回のデータが伝えているのは、個人開発の収益は「短期の爆発」より「継続と課題選び」で決まるという地味な事実です。要点を整理します。
- 公開された108製品のMRR中央値は月1000ドル。1万ドル超は約4分の1にとどまる
- 3ヶ月以内の中央値は394ドル、1年以上では1万ドル。収益は時間をかけて育つ
- 営業支援系は中央値5000ドル、生産性系は186ドル。誰がなぜ払うかで到達点が変わる
副業や個人開発を始めるなら、最初の数ヶ月で結果を判断せず、「払う相手がいる課題」を選んで続けられる設計にすることが現実的な一歩です。もし具体的に動き出すなら、自分が解決できそうな課題を一つ書き出し、それに「誰が・なぜお金を払うか」を言葉にするところから始めてみてください。
よくある質問
MRRとは何ですか?
MRR(Monthly Recurring Revenue)は月次継続収益のことで、サブスクリプションなどで毎月繰り返し発生する売上を指します。単発の売上と違い、翌月以降も続く見込みの収益を表すため、サービスの安定度を測る指標として個人開発やSaaSの世界で広く使われます。
中央値1000ドルは日本の個人開発にも当てはまりますか?
今回のデータは海外の個人開発者が公開したもので、日本の状況をそのまま示すものではありません。また売上を自ら公開した人に偏っている点にも注意が必要です。あくまで「収益が出ている人の分布の目安」として参考にするのが適切です。
個人開発で収益を出すには何年くらいかかりますか?
一概には言えませんが、今回のデータでは1年以上運用した製品の中央値が1万ドルで、3ヶ月以内の394ドルを大きく上回っていました。収益は時間をかけて積み上がる傾向があるため、短期間で判断しすぎないことが目安になります。
どんなジャンルの製品が収益化しやすいですか?
データ上は営業・アウトリーチ支援系の中央値が5000ドルと最も高く、生産性向上系は186ドルと低い結果でした。相手の売上やコスト削減に直結し、予算を持つ企業が払う課題ほど収益化しやすい傾向があると読み取れます。
参考文献
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