「AIエンジニアは稼げる」とよく聞くものの、実際にいくらもらえるのかは経験年数や雇用形態で大きく変わります。20代と40代では年収が300万円以上開くというデータもあり、「AI資格を取れば一律で高収入」という話ではありません。この記事では、厚生労働省・IPA・民間各社の統計をもとに、AIエンジニアの年収相場と、資格取得から年収アップにつながる現実的なルートを整理します。
AIエンジニアの年収相場は「経験年数」で最大2倍近く変わる
まず全体像を数字で確認します。厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」は、AIエンジニアの全国平均賃金を609.8万円としています(令和7年賃金構造基本統計調査ベース)。求人ボックス給料ナビでも、機械学習エンジニアの平均年収は約592万円(掲載求人56,200件、2026年7月時点)と、おおむね近い水準です。
一方で、雇用形態を変えると相場は跳ね上がります。レバテックフリーランスの集計では、フリーランス案件の平均年収は984万円(2024年1月時点)でした。正社員かフリーランスかで、同じ職種でも見える金額が大きく異なります。
20代449万円、40代754万円という年代差
平均値だけを見ると実態を見誤ります。Geeklyの独自データ(2026年4月更新)によると、AIエンジニアの年収は年代別で次のように分かれています。
- 20代:449万円
- 30代:669万円
- 40代:754万円
20代と40代では約1.7倍の差があります。これは「AIエンジニアになれば誰でも高収入」ではなく、経験を積んで担当できる領域が広がるほど年収が上がっていく職種だということを示しています。裏を返せば、未経験で入った直後は平均年収より低い水準からスタートするのが一般的だと考えておくと現実的です。
平均年収を鵜呑みにしないための見方
求人サイトに並ぶ「平均年収」は、経験者・管理職・フリーランスまで含んだ数字であることが多く、これから目指す人の初任給とは距離があります。年収情報を見るときは、平均値ではなく年代別・雇用形態別のレンジで確認するのがおすすめです。
なぜAIエンジニアの需要は高いのか——「量」で足りない日本企業
年収の高さの背景には、供給が需要に追いついていない構造があります。IPA(情報処理推進機構)の「DX動向2025」(2025年7月)によると、DX推進人材が「量」で不足していると回答した日本企業は85.1%に達しました。米国73.6%、ドイツ52.5%(過不足なし・やや過剰の合計と対照)と比べても、日本の人材不足感は際立っています。
つまり、日本では「AIやデータを扱える人が欲しいのに採れない」状態が続いており、それが待遇面に反映されているわけです。
現場の9割超が生成AIを使う時代に
需要の中身も変わってきています。Findyの調査(2025年3月、会員596名)では、エンジニアの91.8%が生成AIを業務で活用していると回答しました。
さらに注目したいのは、企業側の評価姿勢の変化です。「AIツール活用経験を評価する」と答えた企業は、2025年2月の18.1%から同年7月には57.0%へと、半年で急増しています。AIを使える経験そのものが、採用や評価で加点される時代に入りつつあると言えます。
政府の需給ギャップ推計は2019年で止まっている
ここで一つ注意点があります。「AI人材は2030年に◯万人不足」という数字をよく見かけますが、経済産業省の「AI人材の需給ギャップ」推計は、2030年に12.4万人不足という2019年公表の数値が最後のフル推計で、以降更新されていません。
生成AIが普及する前の推計であるため、現在の実態とはずれている可能性があります。政府公式の数字だからと過度に信頼せず、あくまで参考値として捉えるのが妥当です。
G検定・E資格は年収アップにつながるのか
AI分野の登竜門として知られるのが、日本ディープラーニング協会(JDLA)の資格です。G検定(ジェネラリスト検定:AIの活用知識を問う試験)の累計受験者は21万520名、累計合格者は14万8,885名に達しています(2026年5月時点)。
より実装寄りのE資格(エンジニア資格:ディープラーニングの実装スキルを問う試験)は、累計合格者1万838名(2026年3月時点)と、G検定に比べてかなり少数です。受験者数の差は、そのまま難易度と実務ハードルの差を表しています。
資格単体では年収は上がりにくい
前提として押さえておきたいのは、資格を取っただけで年収が上がるわけではないという点です。求人市場が評価するのは、あくまで「AIを使って業務を前に進められるか」という実務能力です。
G検定はAIの全体像や活用イメージをつかむ入口として有効ですが、それだけで転職市場の評価が大きく変わるとは限りません。資格+実務での活用実績をセットにして初めて、年収交渉の材料になると考えておくとよいでしょう。
資格を年収につなげる3ステップ
資格取得を年収アップに結びつけるには、順序があります。
- G検定でAIの全体像と用語をつかむ(活用側の基礎知識)
- 実務や個人プロジェクトで、生成AIを使った成果物を作る(活用実績づくり)
- より実装に踏み込むならE資格やプログラミングスキルへ進む(専門性の証明)
いきなりE資格を目指すより、まずG検定で土台を作り、手を動かしながら実績を積む流れのほうが、多くの人にとって現実的です。
リスキリング経由の転職で「63%が給料上昇」の実データ
学び直しから転職につなげた人の成果を示すデータもあります。経済産業省「リスキリングを通じたキャリアアップ支援事業」(2023年6月〜2025年10月)では、転職成功者の約63%が給料上昇を実現し、未経験職種への転職者は約75%に上りました。
学び直しを経た転職が、実際に収入や職域の変化につながっているケースが一定数あることがわかります。ただしこれは支援事業を利用して転職に成功した人の集計であり、誰もが同じ結果を得られるわけではない点は押さえておきましょう。
焦らず「今の職場でAIを使う」も有効な選択
年収アップと聞くと転職を思い浮かべがちですが、今の職場で生成AIの活用実績を作ることも立派なリスキリングです。前述のとおり、AIツール活用経験を評価する企業は57.0%まで増えています(Findy調査)。
転職市場に出る前に、まず現職で成果を出しておくと、いざ動くときの交渉材料になります。
動く前にやっておきたいこと
- 職業情報サイトや求人ボックスで、目指す職種の年代別年収レンジを確認する
- G検定など入口資格で基礎を固め、AIを使った成果物を一つ作る
- 現職での活用実績を記録しておき、転職時のアピール材料にする
この記事のまとめ
AIエンジニアの年収は、公的統計で約610万円という数字が出ていますが、20代449万円・40代754万円というように経験年数で大きく開きます。フリーランスでは平均984万円という集計もあり、雇用形態でも見える金額は変わります。
需要面では、DX人材が「量」で不足していると答えた日本企業が85.1%に上り、AIツール活用経験を評価する企業も半年で18.1%から57.0%へ急増しました。追い風は確かにあります。
一方で、政府の需給ギャップ推計は2019年で更新が止まっており、「◯万人不足」という数字は参考値として捉えるのが賢明です。資格も、G検定は入口として有効ですが、年収を左右するのは資格そのものより実務での活用実績です。
まずは目指す職種の年代別年収レンジを調べ、G検定で基礎を固めながらAIを使った成果物を一つ作ってみてください。現職での活用実績づくりから始めるだけでも、次の一歩の材料は着実に増えていきます。
よくある質問
AIエンジニアは未経験からでも目指せますか?
未経験からの挑戦は可能ですが、入口の年収は平均値より低いレンジからのスタートが一般的です。Geeklyのデータでは20代の年収は449万円で、40代の754万円とは差があります。まずG検定などで基礎を固め、生成AIを使った成果物を作って実績を示すルートが現実的です。
G検定を取れば年収は上がりますか?
資格単体で年収が保証されるわけではありません。求人市場が評価するのは実務でAIを活用できるかどうかです。G検定はAIの全体像をつかむ入口として有効ですが、実務での活用実績とセットにして初めて年収交渉の材料になると考えるのが妥当です。
AIエンジニアの平均年収はどのくらいですか?
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」では約609.8万円(令和7年賃金構造基本統計調査ベース)、求人ボックス給料ナビでは機械学習エンジニアで約592万円(2026年7月時点)とされています。フリーランス案件ではレバテックフリーランス集計で平均984万円(2024年1月時点)と、雇用形態で差があります。
AI人材は本当に不足しているのですか?
IPA「DX動向2025」では、DX推進人材が「量」で不足していると答えた日本企業は85.1%でした。米国73.6%・ドイツ52.5%と比べても不足感は強い状況です。ただし経済産業省の需給ギャップ推計(2030年に12.4万人不足)は2019年公表が最後で更新が止まっており、あくまで参考値として見るのがよいでしょう。
転職とリスキリング、どちらから始めるべきですか?
必ずしも転職が先ではありません。AIツール活用経験を評価する企業は57.0%まで増えているため(Findy調査)、まず現職で生成AIの活用実績を作るのも有効です。実績を記録しておけば、いざ転職するときの交渉材料になります。
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