AI会計スタートアップのRillet(リル)が、企業価値10億ドルでシリーズC1億ドルを調達しました。注目したいのは資金の規模ではなく、同社CEOが語った「コンサル業界が求める人材が変わりつつある」という証言です。この記事では、AIが定型的な会計・経理業務を担う時代に、コンサルティングやバックオフィスのキャリアで何が評価されるのかを、Rilletの実データをもとに整理します。読み終えたとき、「これから何を学び直せばよいか」の軸が1つ増えるはずです。
AI会計スタートアップRilletの調達が示すもの
- Rilletは企業価値10億ドルでシリーズC1億ドルを調達(過去1年の累計は2億ドル超)
- 顧客は600社以上、うち40%はテック・AI以外の業種
- 顧客の半数は従来型ERPからの移行組
Business Insider Japanの報道によると、AIネイティブ会計スタートアップのRilletは企業価値10億ドルでシリーズC1億ドルを調達し、過去1年間の累計調達額は2億ドルを超えました。
数字の大きさよりも、顧客の内訳に目を向けると変化が見えてきます。同社の顧客は600社以上で、そのうち40%はテック・AI以外の業種です。医療、金融サービス、小売、バイオテクノロジーなど、いわゆるIT先進企業に限らない広がりを持っています。
従来型ERPからの移行が半数を占める
さらに特徴的なのは、Rillet顧客の半数がNetSuite、Workday、Oracle Fusionといった従来型ERP(統合基幹業務システム。会計・人事・在庫などを一元管理するソフト)から移行してきた点です。
これは「新しい会社が最初からAIツールを選んだ」のではなく、すでに基幹システムを運用している企業がAIネイティブな仕組みへ乗り換えていることを意味します。会計・経理の現場で、道具そのものが置き換わり始めているサインと読めます。
月末の手作業がどれだけ減ったか
Andreessen Horowitz(著名なベンチャーキャピタル)の分析では、Rillet顧客56社のうち87%が、月末時点で人の確認が必要な簿記記録は1%未満だったと報告されています。
つまり、月次決算のたびに発生していた突合や修正の大半が自動化されているということです。経理担当者の残業の象徴だった「月末・月初の締め作業」が縮小しつつある実態を、この数字は示しています。
求められる人材が「クリック代行」から変わる
- CEOは「AIがコンサル人材の在り方を変革している」と発言
- 評価軸はシステム導入の実務代行から、業務知識とAI・データ活用力へ
- ツールを操作できることより、業務そのものを理解していることが問われる
Rilletのニコラス・コップCEOは、AIが定型的な会計・経理業務を担うようになるにつれ、企業はより深い業務知識とAI・データ活用スキルを備えた人材を求めるようになっていると述べています。
ここで言う「クリック代行」とは、ERP刷新プロジェクトなどで、システムの設定画面を操作し、データを移行し、マニュアル通りに導入作業を進める実務のことです。これまでのコンサルティング案件では、こうした導入の手を動かす人手が数年がかりで必要とされてきました。
導入の実務はAIで圧縮されつつある
コップCEOの指摘は、ERP刷新に伴う長期のコンサル業務がAIによって短縮されつつある海外の実態を背景にしています。設定や移行といった定型作業がAIで巻き取られると、手を動かす工数に価値を置いてきた仕事は縮小していきます。
この変化は、会計・経理に限った話ではありません。定型的な導入・運用の代行を主業務にしてきた領域全般に、同じ圧力がかかると考えられます。
これから評価されるのは「業務知識×AI活用力」
代わりに評価軸として浮上しているのが、コップCEOの言う「深い業務知識」と「AI・データ活用スキル」の掛け合わせです。
なぜこの組み合わせなのかを分解すると理解しやすくなります。AIは作業を速くこなせますが、その出力が業務のルールや会計基準に照らして正しいかを判断するには、人間側の業務理解が要ります。逆に、業務は分かってもAIをうまく使えなければ、生産性の差は開いていきます。
- 業務知識だけ … 作業は正確でも、処理スピードでAI活用者に差をつけられる
- AI活用力だけ … 速く出力できても、正しさを判断できず手戻りが増える
- 両方を持つ … AIに任せる範囲と自分で確かめる範囲を線引きできる
つまり、これからのキャリアで守りになるのは「ツールを操作できること」ではなく、「その業務を理解したうえでAIを使いこなせること」だと言えます。
会計・バックオフィス職が今から学び直すこと
Rilletの事例が示す方向性を、会計・経理・バックオフィスで働く人の行動に落とし込むと、次の3ステップに整理できます。
自分の業務を「定型」と「判断」に仕分ける
まず、日々の仕事を「定型作業」と「判断が必要な仕事」に分けてみます。仕訳の入力や突合のような定型作業は、Rilletの例が示す通りAIに置き換わりやすい領域です。
一方、AIの出力が正しいかを確かめる、例外的な取引の処理方針を決める、といった判断を伴う仕事は人に残りやすい部分です。自分の時間がどちらに多く使われているかを可視化することが出発点になります。
AIツールに「業務のルール」を通す練習をする
次に、生成AIや会計AIを実際に触りながら、自分の業務ルールを反映させる練習をします。
- AIの出力を鵜呑みにせず、根拠となる基準やデータを確認する
- 間違いを見つけたら、どう指示すれば直るかを試す
- 機密情報や個人情報を入力しない運用を最初から徹底する
ここで身につくのは、AIに任せる範囲と自分で確かめる範囲を見極める感覚です。これはコップCEOの言う「業務知識×AI活用力」の中核にあたります。
業務知識を言語化し、説明できる状態にする
最後に、自分が持つ業務知識を言葉にして整理します。会計基準の背景、社内フローがそうなっている理由、例外処理の判断基準などを、他人に説明できる形にしておくことです。
Rillet顧客の40%がテック以外の業種だったように、AIの導入は業界を問わず進みます。そのとき業務を深く理解し、AIの使いどころを説明できる人は、部署やプロジェクトの中で頼られる存在になりやすいと考えられます。
この記事のまとめ
Rilletの調達が投げかけているのは、「AIで会計の仕事が消える」という単純な話ではありません。定型的な導入・作業の価値が下がり、業務知識とAI活用力を掛け合わせられる人材の価値が上がる、という評価軸の移動です。
- Rilletは企業価値10億ドルで1億ドルを調達、顧客の半数は従来型ERPからの移行組
- 顧客56社の87%は月末に確認が必要な記録が1%未満で、締め作業が自動化されつつある
- CEOは求める人材が「実務代行」から「業務知識×AI活用力」へ変わったと証言
- 会計・バックオフィス職は、定型と判断の仕分け・AIに業務ルールを通す練習・業務知識の言語化から始められる
自分の仕事を「定型」と「判断」に仕分けるところからなら、今日でも始められます。まずは直近1週間の業務を書き出し、どこがAIに任せられそうかを眺めてみてください。
よくある質問
AIが会計業務を担うと、経理の仕事はなくなりますか?
Rilletの事例が示すのは「仕事の消滅」ではなく「作業内容の移動」です。仕訳入力や突合といった定型作業は自動化が進む一方、AIの出力を確認し例外を判断する仕事は人に残ります。定型作業に偏っている場合は、判断を伴う領域へ比重を移す準備が有効だと考えられます。
コンサル業界を目指す場合、これから何を身につければよいですか?
RilletのCEOは、企業が「深い業務知識とAI・データ活用スキルを備えた人材」を求めるようになっていると述べています。システム導入の実務をこなす力よりも、業務そのものを理解したうえでAIを活用できる力が評価されやすい方向にあると言えます。
未経験からでも「業務知識×AI活用力」は身につけられますか?
一次ソースに未経験者向けの具体的な道筋は示されていないため断定はできませんが、業務知識は実務を通じて、AI活用力はツールを実際に触りながら段階的に積み上げられる性質のものです。まずは自分の担当業務でAIを使い、出力の正しさを確かめる練習から始めるのが現実的です。
従来型ERPの経験は無駄になりますか?
無駄になるとは限りません。Rillet顧客の半数はNetSuiteやWorkdayなど従来型ERPからの移行組で、そこには既存システムの業務を理解した人が関わっています。ERPで培った業務理解は、AIネイティブな仕組みへ移る際にも活きる土台になり得ます。
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