「これから資格を取るなら、どの分野を選べば市場価値につながるのか」。そう迷っている社会人にとって、実際に働く人が「次に取りたい」と考えている資格の傾向は、有力なヒントになります。この記事では、日経転職版が公開した「今後取得したい資格」ランキングの結果と、そこから読み取れるキャリア戦略のポイントを整理します。
「今後取得したい資格」ランキング上位はAI系が独占
日経転職版が登録会員を対象に実施した「資格と学び直しに関する意識調査」で、「今後取得したい資格」の総合ランキングが公開されました(出典:日経転職版「26年いま取得したい人気の資格ランキング AI関連が上位に」)。
このランキングで注目すべきは、上位2つをAI関連資格が占めた点です。
- 1位:AI検定(117点)
- 2位:G検定(115点)
- 3位:中小企業診断士(104点)
- 4位:簿記検定2級(日商)(88点)
- 5位:宅地建物取引士(86点)
1位のAI検定と2位のG検定は、いずれもAIやディープラーニング(人間の脳を模した多層構造で学習する技術)に関する基礎知識を問う資格です。この2つが定番資格である簿記や宅建を上回った点に、キャリアパーソンの関心の変化があらわれています。
「すでに持っている資格」ではなく「これから取りたい資格」
このランキングで押さえておきたいのは、集計されているのが取得済みの資格ではなく、これから取りたいと考えている資格だという点です。
つまり、現時点での保有者数ではなく、働く人の「学び直しの意欲」がどこに向いているかを映した指標といえます。すでに一般的な簿記や宅建よりAI系資格が上位に来たのは、今まさに関心が高まっている分野だからだと考えられます。
AI検定とG検定は何が違うのか
名前が似ているため混同されやすいですが、性格の異なる資格です。ランキングの背景を理解するうえで、それぞれの位置づけを簡単に整理します。
- AI検定:AIに関する基礎知識を幅広く問うタイプの検定。文系・非エンジニアでも入りやすい入門レベルとして位置づけられることが多い
- G検定:日本ディープラーニング協会(JDLA)が実施する検定で、ディープラーニングを事業に活用するための知識を問う。ビジネス職の受験者も多い
25位までの内訳に見る「学び直しの地図」
上位だけでなく、ランキング全体の分野構成も参考になります。日経転職版の調査では、総合25位までに入った資格を分野別に見ると、AI・データサイエンス分野が6つランクインし、分野別で最多となりました。
次いで多かったのが、法律・労務・経営分野とIT分野で、それぞれ5つずつでした(出典:日経転職版)。
AI・データサイエンスへの関心が最も厚い
分野別で最多となったAI・データサイエンス系は、上位のAI検定・G検定を含め、複数の資格が25位以内に散らばっています。特定の1資格だけに人気が集中しているのではなく、この領域全体への関心が厚いことがうかがえます。
要するに、「AIを扱えるスキルを何らかの形で証明したい」というニーズが、資格選びの動機として広がっているといえるでしょう。
定番の経営・法律・IT系も根強い
一方で、法律・労務・経営分野とIT分野がそれぞれ5つと続いた点も見逃せません。中小企業診断士(3位)や簿記2級(4位)、宅建(5位)といった実務に直結する定番資格は、依然として学び直しの選択肢として根強い支持を集めています。
- 関心の中心はAI・データサイエンス分野に移りつつある
- ただし経営・法律・IT系の実務資格も引き続き選ばれている
- 「新しい分野」と「定番の実務資格」を組み合わせる視点が有効
「取りたい」と「取る」の間にあるギャップ
もう一つ、この調査には興味深いデータがあります。「取りたい」と思うことと、実際に「取る予定」を立てることは別だという点です。
日経転職版によると、「取得予定」の割合が高い資格の1位はUSCPA(米国公認会計士)で、今後取得したいと回答した人のうち38%が「取得予定」と答えました(出典:日経転職版)。
人気ランキングと「実行率」は必ずしも一致しない
USCPAは総合ランキングの上位5位には入っていません。それでも「取りたい」と答えた人の中では、実際に取得計画まで進めている割合が最も高かったわけです。
つまり、多くの人が「関心はある」と答える資格と、「本気で計画を立てて動く」資格は必ずしも同じではない、ということです。ランキングの順位だけでなく、自分がどこまで具体的に行動できるかを見極めることが大切だといえます。
自分に合う資格を選ぶ3つの視点
ランキングを参考にしつつ、自分にとって意味のある資格を選ぶために、次の3つの視点で考えてみることをおすすめします。
- 目的の明確化:転職で武器にしたいのか、現職での評価を上げたいのか、目的から逆算する
- 学習コストとの見合い:取得予定率が高いUSCPAのように難関資格ほど時間もかかる。生活と両立できるかを確認する
- 陳腐化しにくさ:AI系のように変化の速い分野は、資格取得後も継続的な学び直しが前提になる点を理解しておく
この記事のまとめ
日経転職版の「今後取得したい資格」ランキングは、働く人の学び直しの関心がAI・データサイエンス分野へ広がっていることを示しています。要点を振り返ります。
- 総合1位はAI検定(117点)、2位はG検定(115点)でAI系が上位を独占
- 25位までの分野別ではAI・データサイエンスが6つで最多、経営・法律・IT系も根強い
- 「取得予定」率の1位はUSCPAで、関心と実行率は必ずしも一致しない
ランキングはあくまで全体の傾向であり、あなたにとっての正解とは限りません。まずは自分のキャリアの目的を整理したうえで、気になる資格があれば公式サイトで試験範囲や受験料を確認してみてください。関心が高い分野の入門資格から一歩を踏み出すのも、無理のない始め方です。
よくある質問
AI検定とG検定はどちらを先に取るべきですか?
一概にはいえませんが、AIの全体像をまず把握したい人はAI検定のような入門的な検定から、ディープラーニングを事業活用する知識を体系的に学びたい人はG検定から検討するのが一つの目安です。それぞれ主催団体や出題範囲が異なるため、公式サイトで試験概要を比較したうえで選ぶことをおすすめします。
資格ランキングの上位を取れば転職に有利になりますか?
ランキング上位は「関心の高さ」を示すものであり、そのまま転職での評価に直結するとは限りません。重要なのは、志望する職種や業務で求められるスキルと資格が結びついているかどうかです。自分のキャリアの目的から逆算して選ぶことが、資格を活かすうえで大切だと考えられます。
AI系資格は取っても数年で古くならないでしょうか?
AI・データサイエンスは変化の速い分野のため、資格取得後も継続的な学び直しが前提になります。ただし、基礎知識を体系的に身につけておくことは、その後の情報のアップデートを効率化するうえで役立ちます。資格は「ゴール」ではなく学び続けるための「出発点」と捉えるとよいでしょう。
未経験からでもAI検定やG検定に挑戦できますか?
これらの資格は基礎知識を問うものが中心のため、非エンジニアやAI未経験の社会人も受験対象に含まれます。実際、G検定などはビジネス職の受験者も多いとされています。まずは公式のシラバス(出題範囲)や公式テキストを確認し、学習に必要な時間の目安をつかむところから始めるとよいでしょう。
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