IT資格を取れば転職や年収アップに直結する。そう考えて勉強を始める人は少なくありません。ところが資格を実際に持っている人に聞くと、約半数が「役に立ったことはない」と答えています。この記事では、キーマンズネットの読者387人調査をもとに、IT資格のリアルな実利を保有者側の目線で整理します。「給与は上がりにくいが転職では効いている」という逆説的な現状と、これから資格を取るなら何を選ぶべきかまでを解説します。
IT資格保有者の49.3%が「役に立ったことがない」と答えた
まず結論から示します。IT資格は「持っているだけで全員に効く」ものではありません。
キーマンズネットが読者387人に実施した調査によると、資格保有者の49.3%が「資格が役に立ったことはない」と回答しました(出典:キーマンズネット「IT資格、給与アップや転職に本当に効果がある?」2026年)。約2人に1人が、手にした資格の効果を実感できていない計算です。
一方で、IT資格そのものを持つ人は多数派です。同調査でのIT資格保有率は72.4%。2021年の62.9%から4年連続で増加してきましたが、今回は前年と同率で頭打ちになりました。
つまり、資格を取る人は増えて一巡した一方、「取ったのに使えていない」と感じる層も一定数積み上がっている、という状態です。
- IT資格の保有率は72.4%と高水準だが、伸びは頭打ち
- 保有者の49.3%が「役に立ったことがない」と回答
- 資格は「持つこと」ではなく「どう使うか」で価値が分かれる
大企業ほど「役に立たない」と感じている
同じ資格でも、勤め先の規模によって受け止め方が違います。
「資格が役に立ったことがない」と答えた割合は、従業員5001人以上の大企業で57.7%、100人以下の中小企業で42.5%。その差は15ポイントほどあります(同調査)。
背景には、大企業ほど資格以外の評価軸(実務経験・社内実績・チーム貢献)が整っている事情があると考えられます。資格が昇進や配属の決め手になりにくいぶん、「取ったが直接は効かなかった」という感覚につながりやすいわけです。
逆に中小企業では、限られた人員のなかでスキルを客観的に示す手段として資格が機能しやすい、と読み解けます。
給与は上がりにくいが、転職では効き始めている
「役に立たない」という声が半数近くある一方で、資格の効き方には明確な変化が出ています。それは給与アップより転職局面で効くという方向へのシフトです。
同調査で「就職、転職に有利に働いた」と答えた人は19.6%で、前年より6.1ポイント増えました。対して「給与が上がった」は11.8%で、前年より4.6ポイント下がっています。
- 就職・転職に有利に働いた:19.6%(前年比+6.1pt)
- 給与が上がった:11.8%(前年比-4.6pt)
要するに、資格は「今の会社での昇給チケット」というより「外に出るときのパスポート」としての性格を強めています。同じ資格でも、社内評価に期待するか、転職市場でのアピール材料と割り切るかで、得られる実感は変わってきます。
なぜ「転職での効果」が伸びているのか
出典データはここまでの数字を示すにとどまりますが、読者が行動を決めるうえで押さえておきたい見方を補足します。
採用の現場では、書類選考の段階で応募者のスキルを短時間で見極める必要があります。資格は、経歴書だけでは伝わりにくいスキルの下限を、第三者の基準で保証する役割を果たします。とくに未経験分野への転職では、実務経験の不足を補う材料になりやすいと考えられます。
一方、社内での昇給は評価制度や原資に左右されるため、資格一つで動きにくいのが実情です。これが「転職では効くが給与では効きにくい」という数字の差につながっているとみられます。
保有率が伸びているのはクラウドとセキュリティ
「どの資格を取るか」で迷うなら、保有率が実際に伸びている分野が一つの手がかりになります。同調査では、伸びているジャンルがはっきり出ています。
- クラウド系(AWS・Google Cloud・Azureなど)の保有率合計:16.0%→23.2%
- セキュリティ系(情報セキュリティマネジメントなど)の保有率合計:35.0%→42.9%
- G検定(AI・ディープラーニングの基礎知識を問う資格):7.0%→11.1%
- 生成AIパスポート(新設項目):5.0%
クラウドとセキュリティは、DX(デジタル技術による業務変革)とサイバー攻撃対策という企業の実需に直結する領域です。保有率の伸びは、現場で求められている方向を映していると読み取れます。
生成AIパスポートは今回の調査で初めて集計された新しい資格で、いきなり5.0%が保有しています。生成AIに関する基礎知識を証明する資格で、AI活用の裾野が広がっていることをうかがわせます。
これから取るなら「業務に接続する資格」を選ぶ
保有者の半数が「役に立たなかった」と答える一方で、伸びている分野があるという事実は、選び方のヒントになります。
- 今の仕事、または狙う仕事の業務に直接つながる資格を選ぶ
- 保有者が増えている分野(クラウド・セキュリティ・AI基礎)を優先する
- 資格取得後に、実務や成果物とセットで語れる状態を作る
「有名だから」「なんとなく将来性がありそう」で選ぶと、49.3%の「役に立たなかった」側に入りやすくなります。逆に、業務や志望職種に接続する資格を選べば、転職局面での19.6%の効果を引き寄せやすくなると考えられます。
この記事のまとめ
IT資格をめぐる現状を、保有者側のデータで整理してきました。押さえておきたい点は次の3つです。
- 保有率は72.4%と高いが、49.3%が「役に立ったことがない」と回答している
- 効き方は「給与アップ」から「転職での有利さ」へシフト(転職有利は前年比+6.1pt、給与増は-4.6pt)
- 保有率が伸びているのはクラウド(16.0%→23.2%)・セキュリティ(35.0%→42.9%)・AI基礎
資格は「取れば報われる魔法のカード」ではありません。ただし、業務や志望職種に接続する資格を選び、転職活動と組み合わせれば、実利は十分に見込めます。
これから資格を選ぶなら、まずは自分の狙う仕事の求人票を数件読み、そこで求められているスキルと重なる資格を候補にするところから始めるのがおすすめです。気になる資格が絞れたら、公式サイトで出題範囲と受験費用を確認してみてください。
よくある質問
IT資格は転職に本当に役立ちますか?
キーマンズネットの調査では、「就職・転職に有利に働いた」と答えた人が19.6%で、前年より6.1ポイント増えています。とくに未経験分野への転職では、スキルの下限を第三者基準で示す材料になりやすいと考えられます。ただし全員に効くわけではなく、業務や志望職種に接続する資格を選ぶことが前提になります。
資格を取れば給与は上がりますか?
同調査で「給与が上がった」と答えた人は11.8%にとどまり、前年より4.6ポイント下がっています。社内の昇給は評価制度や原資に左右されるため、資格一つでは動きにくいのが実情です。年収アップを狙うなら、資格取得と転職活動をセットで考えるほうが現実的です。
いま保有率が伸びているのはどの分野の資格ですか?
クラウド系(AWS・Google Cloud・Azureなど)が16.0%から23.2%へ、セキュリティ系が35.0%から42.9%へ伸びています。AIの基礎知識を問うG検定も7.0%から11.1%に増加し、新設の生成AIパスポートは初回集計で5.0%が保有していました。
約半数が「役に立たなかった」と答えるのはなぜですか?
とくに従業員5001人以上の大企業では57.7%が「役に立ったことがない」と回答しています。大企業ほど実務経験や社内実績など資格以外の評価軸が整っており、資格が昇進や配属の決め手になりにくいためと考えられます。中小企業では42.5%と低く、企業規模で受け止めに差があります。
資格選びで失敗しないコツはありますか?
「有名だから」で選ぶより、今の仕事や狙う仕事の求人票で求められているスキルと重なる資格を選ぶことです。保有者が増えているクラウド・セキュリティ・AI基礎の分野を優先し、取得後は実務や成果物とセットで語れる状態にしておくと、転職局面での効果を引き出しやすくなります。
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