単価アップを切り出したフリーランスのうち、希望通りに交渉が通ったのは14.1%にとどまります。残りの72.4%は「拒否された」か「保留のまま」。この記事では、交渉が通らない現実を調査データで確認したうえで、次の交渉で主導権を握るための準備と、法律を味方につける具体的な手順をまとめます。
フリーランスの値上げ交渉が通らない実態
株式会社ふぁくたむが、フリーランス・個人事業主と下請け企業の経営者あわせて300人に実施した調査があります。直近1年で単価アップを交渉した人のうち、希望通りに通ったのは14.1%、72.4%は「拒否された」または「保留のまま」という結果でした。
交渉を切り出せること自体は前進です。それでも7割以上が壁にぶつかっている事実は、値上げが「言えば通るもの」ではなく、準備と根拠を伴う交渉事であることを示しています。
「お願い」ではなく「交渉」として臨む
通らなかった人の多くは、値上げを「お願い」として伝えています。お願いは断りやすく、保留にもしやすいものです。交渉として成立させるには、相手が判断できる材料を揃える必要があります。
- 現在の単価と、依頼された業務範囲のずれ
- 稼働時間・納品物の量の変化
- 市場の相場や物価・コストの上昇分
「保留のまま」を放置しない
調査で目立つのが「保留のまま」という曖昧な状態です。返事を待つうちに時間だけが過ぎ、結局は現状維持になりがちです。保留が出たら、回答期限を区切って再確認する一文を添えると、話が流れにくくなります。
インボイス分の押し付けに注意する
同じ調査では、取引先に言われた理不尽な一言として「インボイス登録分の消費税は自己負担して」という要求が3位に挙がっています。インボイス制度(適格請求書等保存方式)に登録したことで生じる消費税の負担を、報酬を据え置いたまま発注側がフリーランス側へ押し付ける構図です。
なぜこれが問題なのか
インボイス登録によって、これまで免税だった事業者も消費税を納める立場になりました。その分のコストを考慮せず従来どおりの金額で発注し続ける行為は、取引の力関係を背景にした一方的なしわ寄せになりかねません。
公正取引委員会のフリーランス法特設サイトでも、コスト増を考慮しない従来金額での発注は違反のおそれがある例として示されています。言われるまま受け入れる必要はない、という前提を持っておくことが大切です。
言われたときの受け止め方
その場で合意せず、いったん持ち帰る姿勢が有効です。以下のような確認を挟むだけで、安易な押し付けを避けやすくなります。
- 消費税分を含めた総額で見積もりを出し直す
- 発注条件の変更点を書面やメールで残す
- 公正取引委員会の特設サイトで該当例を確認する
次の交渉を有利にする準備リスト
交渉の成否は、話し合いの場より前の準備で大きく変わります。感情ではなく事実で語れる状態を作っておくことが、14.1%の側に回る近道です。
交渉前にそろえておく材料
- 契約当初からの業務範囲の変化を時系列で整理する
- 直近半年〜1年の稼働時間・納品量の記録
- 同職種・同スキルの相場データ
- 希望単価と、その根拠を1〜2行で説明できるメモ
伝え方の順序を決めておく
結論から伝えるのが基本です。「◯月以降、単価を◯円に見直したい」とまず提示し、その後に根拠を添えます。相手が社内で稟議を上げる場合もあるため、口頭だけでなくメール等の文面でも残すと判断が進みやすくなります。
関係を壊さずに切り出すコツ
値上げ交渉は関係悪化を恐れて切り出せない人が少なくありません。これまでの実績への感謝を一言添え、継続して協力したい意思を示したうえで条件を提示すると、対立ではなく調整として受け止められやすくなります。
この記事のまとめ
フリーランスの値上げ交渉は、7割以上が拒否・保留に直面するのが現実です。だからこそ、値上げを「お願い」ではなく根拠を伴う「交渉」として扱う準備が差を生みます。
- 希望通り通ったのは14.1%、72.4%は拒否・保留という現実を踏まえる
- 業務範囲の変化・稼働記録・相場データを揃えて結論から伝える
- インボイス分の押し付けは受け入れ必須ではなく、持ち帰って確認する
- 不当な条件はフリーランス法・公正取引委員会の特設サイトで確認する
まずは、今の取引先ごとに「業務範囲と単価のずれ」を書き出すところから始めてみてください。交渉の材料が目に見える形になれば、切り出すハードルは大きく下がります。
よくある質問
値上げ交渉を切り出すと契約を切られませんか?
交渉を理由に即契約解除となるケースは多くありません。ただ不安がある場合は、感謝と継続意思を示したうえで、根拠とともに条件を提示すると対立になりにくくなります。なお、一方的な取引条件の変更はフリーランス法の対象になり得ます。
インボイス分を自己負担してと言われたら従うべきですか?
その場で合意せず持ち帰るのが無難です。公正取引委員会のフリーランス法特設サイトでは、コスト増を考慮しない従来金額での発注が違反のおそれがある例として示されています。消費税分を含めた総額で見積もりを出し直す対応が考えられます。
相場がわからず希望単価を決められません。どうすればよいですか?
同職種・同スキルのフリーランス案件の単価を複数のエージェントサイトで確認し、自分の経験年数や業務範囲と照らし合わせる方法があります。加えて、自分の稼働時間と納品量から実質時給を計算すると、希望単価の根拠を説明しやすくなります。
「保留のまま」にされたときはどうすればよいですか?
回答期限を区切って再確認するのが有効です。「◯日までにご返答いただけますか」と一文を添えるだけでも、話が自然消滅しにくくなります。期限を過ぎても回答がない場合は、現状の条件で続けるか見直すかを自分側で判断する材料になります。
参考文献
関連記事




コメント