2026年度の賃上げ実施率83.2%、中小企業が大企業を逆転

2026年度の賃上げ実施率83.2%、中小企業が大企業を逆転

2026年度に賃上げを実施した企業は83.2%。この数字を「景気が良くなったから」と読むと、キャリア判断を間違えるかもしれません。注目すべきは、賃上げ率「5%以上」の割合で中小企業(42.6%)が大企業(41.4%)を3年ぶりに逆転した点です。この記事では、東京商工リサーチの最新調査をもとに、賃上げの中身と、転職・スキルアップを考える人が今どう動くべきかを整理します。

目次

2026年度の賃上げ実施率は83.2%、3年ぶりに上昇

東京商工リサーチが2026年7月31日〜8月11日に実施したアンケート調査(有効回答5,909社)によると、2026年度に賃上げを実施した企業は83.2%でした。前年度の82.0%から1.2ポイント上昇し、3年ぶりの上昇となっています(出典:東京商工リサーチ調査を紹介した大島社会保険労務士事務所の記事)。

数字だけを見ると「多くの企業が賃上げに前向き」という話に聞こえます。ただ、賃上げの背景を押さえておかないと、自分の勤務先や転職先を判断する材料にはなりません。

規模別に見ると実施率にはまだ差がある

賃上げ実施率を企業規模別に分けると、傾向がはっきりします。

  • 大企業:93.8%
  • 中小企業:82.3%

どちらも前年度を上回りましたが、実施率そのものは大企業が10ポイント以上高い状態が続いています。「実施したかどうか」で見ると、依然として大企業のほうが賃上げに踏み切りやすいという構図です。

製造業が最も高く、ベースアップは2年ぶりに6割台

産業別の実施率では製造業が90.0%で最高でした。加えて、基本給そのものを底上げするベースアップ(通称ベア)を実施した企業は61.1%で、前年度の59.6%から上がり、2年ぶりに6割台に到達しています。

ベースアップとは、年齢や勤続で自動的に上がる定期昇給とは別に、給与テーブル全体を引き上げる賃上げのことです。一度上げると翌年以降の基準も上がるため、一時金(賞与)より継続的な収入増につながりやすい特徴があります。

中小企業が大企業を逆転、賃上げ率「5%以上」の内訳

この調査で最も注目したいのが、賃上げ率の高さです。賃上げ率「5%以上」と回答した企業の割合は、中小企業42.6%に対し大企業41.4%。中小企業が大企業を上回るのは、2023年度以来3年ぶりのことです。

「実施したかどうか」では大企業が優勢でも、「どれだけ上げたか」では中小企業が競り勝った、という構図になります。

なぜ中小企業が踏み込んだのか

背景にあるのは、人手不足と退職防止です。人材の採用競争が激しくなるなかで、賃金を上げなければ人が集まらず、既存の社員も引き止められない。中小企業ほど、この「人材つなぎとめ競争」に直面しやすいと言えます。

つまり今回の賃上げは、業績が伸びたから配分するという性質だけでなく、人を確保するための守りの賃上げという側面が強いと考えられます。ここが、キャリアを考えるうえで見逃せないポイントです。

「規模の大きさ=給料の上がりやすさ」とは限らない

転職先を選ぶとき、「大企業のほうが給料が上がる」と考える人は少なくありません。しかし今回のデータは、その前提が常に正しいわけではないことを示しています。

  • 実施率では大企業が優位
  • 賃上げ率「5%以上」の割合では中小企業が逆転

要するに、規模だけで賃金の伸びやすさは判断できないということです。中小企業でも、人材確保を経営課題に据えている会社は積極的に賃上げに動いています。

ただし、これは全体の傾向です。同じ「中小企業」でも賃上げ余力は会社ごとに大きく異なります。個別の企業を判断する際は、決算情報や求人票の給与レンジ、面接での確認を通じて実態を見極めることが欠かせません。

賃上げ局面で転職・スキルアップを考える人が押さえる視点

賃上げが広がる局面は、実は自分の待遇を見直す好機でもあります。企業が人材確保に動いているということは、それだけ働き手の交渉余地が生まれているとも読めるからです。

今の会社にとどまる場合に確認したいこと

まず、自社の賃上げが「一時金中心」なのか「ベースアップを含む」のかを確認しましょう。前述のとおり、ベースアップは翌年以降の基準も引き上げるため、長期的な収入への効き方が違います。

  • 今年の賃上げにベースアップが含まれているか
  • 定期昇給と別枠で上がったのか
  • 来年度以降も継続する見込みか

これらは就業規則や給与明細、人事への確認で把握できます。数字の「率」だけでなく、中身を見る習慣が大切です。

転職を検討する場合の判断軸

転職を考えるなら、企業規模だけで絞り込まないことをおすすめします。今回のデータが示すように、賃上げに前向きな中小企業は確実に存在します。

  • 求人票の給与レンジが業界水準と比べて高いか
  • 基本給が高いか(賞与依存で総額を見せていないか)
  • 直近数年の昇給・ベースアップの実績を面接で確認できるか
  • 人手不足を理由に処遇改善へ動いている業界・職種か

製造業の実施率が90.0%と高かったように、人材を必要としている業界ほど処遇改善に動きやすい傾向があります。自分のスキルがそうした業界で通用するかを見極めることが、年収アップへの近道になります。

スキルを高めて「上げてもらえる側」に回る

守りの賃上げが広がる局面でも、最終的に待遇を左右するのは個人の市場価値です。人手不足の職種でスキルを持つ人材ほど、賃上げや好条件の対象になりやすい構図は変わりません。

デジタルやAI活用、専門資格など、需要が続く分野のスキルを積み上げておくことは、賃上げ局面で交渉力を持つための土台になります。賃金が上がる会社を探すのと同時に、上げてもらえる自分を育てる視点も持っておきたいところです。

この記事のまとめ

2026年度の賃上げは、実施率の上昇だけでなく「中身の変化」にこそ意味があります。要点を整理します。

  • 2026年度の賃上げ実施率は83.2%で3年ぶりに上昇
  • 実施率は大企業93.8%・中小企業82.3%で大企業が優位
  • 賃上げ率「5%以上」は中小企業42.6%が大企業41.4%を3年ぶりに逆転
  • 背景は人手不足と退職防止による「人材つなぎとめ競争」
  • 企業規模だけで賃金の伸びやすさは判断できない

賃上げが広がる局面は、自分の待遇や市場価値を見直す機会でもあります。まずは今の会社の賃上げの中身を確認し、そのうえで求人の給与レンジや自分のスキルの需要を照らし合わせてみてください。規模の大小にとらわれず、処遇改善に動いている企業を見つけることが、次の一歩につながります。

よくある質問

賃上げ率「5%以上」で中小企業が大企業を逆転したのはなぜですか?

人手不足と退職防止が主な背景と考えられます。人材の採用・引き止め競争が激しくなるなかで、中小企業ほど賃金を上げなければ人材を確保しにくい状況に置かれています。東京商工リサーチの調査では、賃上げ率「5%以上」の割合は中小企業42.6%が大企業41.4%を上回り、2023年度以来3年ぶりの逆転となりました。

ベースアップと定期昇給は何が違いますか?

定期昇給は年齢や勤続に応じて自動的に上がる仕組みで、給与テーブル自体は変わりません。一方ベースアップは給与テーブル全体を引き上げるため、翌年以降の基準も底上げされます。継続的な収入増につながりやすいのはベースアップです。2026年度はベースアップ実施企業が61.1%と、2年ぶりに6割台に到達しました。

大企業と中小企業のどちらに転職したほうが給料は上がりやすいですか?

一概には言えません。実施率では大企業が優位ですが、賃上げ率「5%以上」の割合では中小企業が逆転しています。規模だけで賃金の伸びやすさは判断できないため、求人票の給与レンジ、基本給の水準、直近の昇給実績などを個別に確認することが大切です。

賃上げが広がる今、転職を考える人は何を確認すべきですか?

企業規模で絞り込まず、処遇改善に動いている業界・企業を見極めることが重要です。求人票の給与レンジが業界水準と比べて高いか、賞与依存ではなく基本給が高いか、直近数年の昇給実績を面接で確認できるかをチェックしましょう。製造業のように人材需要が高い業界ほど賃上げに動きやすい傾向があります。

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