AIコーディングツールが普及し、「これまで売れていた商品が売れなくなった」という声が個人開発の現場で増えています。管理画面のUIテンプレートを販売してきた海外の7人チーム「CodedThemes」も、その一社です。この記事では、彼らが売上を一時最大50%落としながら、AIと競合しない方向へ事業を組み直すまでの過程を、公開された実数値とともに整理します。AI時代に小さなビジネスをどう続けるか、具体的な判断材料を持ち帰ってください。
AIに需要を奪われた個人開発チームの実像
まず前提を共有します。CodedThemesは、Webアプリの管理画面(ダッシュボード)のデザインを部品化して販売する、海外のインディーハッカー(個人・小規模の独立開発者)チームです。
7人チームで40万人超が使う製品を運営
CodedThemesは7人のチームで運営され、提供する製品は40万人を超える開発者に利用されてきました。利用者のなかにはEA Games、Vodafone、国連といった組織も含まれるとされています。
小さなチームが、世界中の開発者に届く製品を持つ。これはAI以前のインディーハッカーの典型的な成功の形でした。
代表製品の売上は累計100万ドル超
製品ごとの数字も公開されています。
- 「Berry」「Mantis」は、デザインフレームワークの公式ストア(MUI Store)上で累計100万ドルを超える売上
- 「Able Pro」は9,600件を超える販売で20万ドルを超える売上
これらは一過性のヒットではなく、長期間にわたって売れ続けてきた製品です。積み上げてきた実績があったからこそ、次に述べる需要減が重く響きました。
2025年、売上が最大50%落ちた理由
転機は2025年です。AIコーディングツールの普及により、CodedThemesの売上は一部の月で最大50%減少しました。ピーク時は月1.5万〜2万ドルあった売上が、現在は約1.2万ドルの水準です。
「買う理由」そのものが消えた
需要が減った理由ははっきりしています。開発者自身がAIでボイラープレートを作れるようになったからです。ボイラープレートとは、どんなアプリでも共通して必要になる、定型的な下地のコードを指します。
従来、開発者はこの下地づくりの時間を節約するためにテンプレートを購入していました。その作業をAIが肩代わりできるようになれば、「買う理由」そのものが薄れます。
「削減された価値」はどこにある仕事か
この構図は、テンプレート販売に限った話ではありません。資料作成、データの一次集計、定型文の作成、簡単なコード生成。こうした「誰がやっても似た結果になる作業」は、AIに置き換わりやすい領域です。
要するに、AIが得意とする定型作業を収入源の中心に置いているほど、需要の急減に巻き込まれやすいということです。自分の仕事や副業の収入が、どの作業に支えられているかを一度棚卸ししておく価値があります。
CodedThemesが選んだ「AIと競合しない」転換
需要が減ったあと、CodedThemesはAIと正面から競うのではなく、AIを前提にした製品へ事業を組み直す道を選びました。
AI対応製品「UIAble」への移行
具体的には、AIと協働する新製品「UIAble」の開発に舵を切っています。AIがコードを生成できる時代でも、「どんなUIを、どう組み合わせるか」を設計し、整った形で提供する役割は残る、という読みです。
- AIが代替できる作業(下地コードの生成)は手放す
- AIが苦手な部分(設計・品質・一貫性)に製品価値を移す
- 長年蓄積した40万人の顧客基盤と実績を土台に使う
個人・小規模ビジネスが応用できる3つの視点
CodedThemesの動きから、AI時代に小さなビジネスやスキルを守るための視点を整理します。
- 収入源を「作業」ではなく「判断・設計・編集」に寄せる。AIの出力を評価し、整え、意思決定する部分は人の仕事として残りやすい領域です
- 既存の顧客・実績という資産を棚卸しする。ゼロから新市場を探すより、信頼を獲得済みの相手に新しい価値を届ける方が現実的です
- AIを競合ではなく道具として組み込む。同じ労力でより多く、より速く提供できれば、価格が下がっても事業を続けられます
これらは特別な才能ではなく、環境変化を直視して配置を変えるという判断の問題です。
この記事のまとめ
CodedThemesの事例が示すのは、AIによる需要の急減は実在するが、それが事業の終わりを意味するわけではない、ということです。月1.5万〜2万ドルから一時最大50%減、現在約1.2万ドルという数字は、痛みを伴う調整の途中経過であり、同時に回復の途中経過でもあります。
- AIに置き換わりやすいのは「誰がやっても似た結果になる作業」
- 守るべきは作業そのものではなく、設計・判断・編集といった人の役割
- 既存の顧客基盤と実績は、AI時代でも通用する資産になる
まず取り組みやすいのは、自分の仕事や副業の収入が「どの作業」に支えられているかを書き出してみることです。そのうえで、AIに任せられる部分と、自分にしかできない判断の部分を分けてみてください。配置を変える余地が見えてきます。
よくある質問
インディーハッカーとは何ですか?
個人または少人数で、外部資金に大きく頼らずに自前の製品やサービスを開発し、その販売で収益を得る独立開発者を指します。今回のCodedThemesは7人チームで、管理画面のUIテンプレートを販売してきました。
AIが普及すると、個人開発やテンプレート販売はもう成り立たないのですか?
成り立たなくなるのは「AIが肩代わりできる定型作業」に収入源を依存している場合です。CodedThemesは需要が一部の月で最大50%減りましたが、事業自体は約1.2万ドル/月の水準で継続し、AI対応製品への転換を進めています。設計や品質の担保など、人が担う部分へ価値を移せるかが分かれ目です。
自分の副業やスキルがAIに置き換わるか、どう見極めればよいですか?
収入や作業内容を「誰がやっても似た結果になる作業」と「判断・設計・編集が必要な作業」に分けてみてください。前者の比率が高いほどAIの影響を受けやすく、後者に強みを移せるほど継続しやすくなります。
AIに需要を奪われたとき、まず何をすべきですか?
CodedThemesの動きが参考になります。AIと競うのではなく、既存の顧客基盤や実績という資産を棚卸しし、AIを道具として組み込んだ新しい価値の形を設計し直すことです。ゼロから新市場を探すより、信頼を得ている相手に届け直す方が現実的な場合が多いです。
参考文献
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