「AIに仕事を奪われるかもしれない」——そんな不安を抱えながら、リスキリング(学び直し)に踏み出せずにいる人は少なくありません。ですが、企業側のデータを見ると景色が変わります。パーソル総合研究所が2026年7月30日に公開した調査では、「人材育成・リスキリング・最適配置」が経営課題の2位(45.3%)に挙がりました。この記事では、企業が今どこに課題を感じ、なぜあなたの学び直しが歓迎される追い風なのかを、一次データから読み解きます。
企業の経営課題1位は「人材確保」、2位に「リスキリング」
まず結論からお伝えします。多くの企業は今、人を採ること・育てることに最も頭を悩ませています。
パーソル総合研究所の「人事部トレンド定量調査2026」によると、企業の経営課題のトップは「人材の確保・採用競争への対応」で53.9%でした。半数を超える企業が、人材の確保を最優先の課題として挙げています(出典:パーソル総合研究所「人事部トレンド定量調査2026」2026年7月30日公開)。
続く2位・3位も、働く個人にとって見逃せない内容です。
- 2位:人材育成・リスキリング・最適配置(45.3%)
- 3位:DX・AIを活用した業務変革・新たな価値創出(38.2%)
つまり、企業の経営課題の上位3つは「人を確保し、育て、AI時代の業務に対応させる」という一続きのテーマで占められています。
「AIに奪われる」の裏で企業は人を求めている
個人の視点では「AIに仕事を奪われる」という不安が語られがちです。一方で企業の視点は逆方向を向いています。人材の確保と育成が経営課題の1位・2位という事実は、企業が人手不足のなかで既存の社員に長く活躍してほしいと考えていることを示しています。
リスキリングが経営課題の上位にあるということは、学び直して新しいスキルを身につけた社員は、社内で必要とされる可能性が高いということです。学び直しは、個人の自己満足ではなく企業のニーズと重なる行動だと言えます。
賃上げ企業は73.0%まで拡大している
人材を確保したい企業の姿勢は、賃金にも表れています。
賃上げを「引き上げ予定/引き上げ済」とする企業は、2022年の61.8%から2026年には73.0%まで拡大しました(出典:同調査)。約4年で11ポイント以上増えた計算です。賃上げ判断の最大の要素は「物価動向」(29.7%)でした。
物価上昇が背景にあるとはいえ、企業が人材をつなぎとめるために処遇改善を進めている流れは、働く側にとって追い風の一つと言えます。
人事部自身もAI活用に苦戦している
次に押さえておきたいのが、「企業側も万全ではない」という実態です。ここに、個人がスキルで貢献できる余地があります。
人事部でAIを日常的に活用している企業は39.2%にとどまりました(出典:同調査)。AI活用が経営課題に挙がる一方で、人事部門自身のAI活用は4割に届いていません。
活用が進まない理由の最多は「機密情報・個人情報の漏洩リスク」(34.8%)でした。個人情報を多く扱う人事部門ならではの慎重さがうかがえます。
人事部の課題は「専門性不足」と「人員不足」
人事部門が抱える内部の課題も明らかになっています。
- 専門性不足(45.2%)
- 人員不足(44.6%)
いずれも4割を超えており、人事部門が「やるべきことは増えているのに、人も専門知識も足りない」状態にあることが読み取れます(出典:同調査)。
人事部の関与は採用・評価に偏っている
同調査では、人事部が主導・関与している施策が「新卒採用」「中途採用」「人事考課・評価の調整」に偏り、「DX・デジタル化・AI活用の推進」や「経営戦略の策定」への関与は少ないことも示されました。
要するに、企業が課題と認識しているDX・AI領域に、人事部門の手がまだ十分に回っていないということです。この空白は、デジタルスキルを持つ人材が社内で存在感を発揮できる場面が増えることを示唆しています。
調査データから考える、個人の学び直し戦略
ここまでの企業データを、個人のキャリア行動に翻訳してみます。難しく考える必要はありません。企業が求めている方向に、少しずつ歩みを合わせるだけです。
- リスキリングは経営課題2位。学び直しは企業ニーズと重なる
- 企業のAI活用は道半ば。安全な活用スキルに需要がある
- 賃上げ企業は73.0%。処遇改善の流れが続いている
まず取り組みたい3つのステップ
企業の課題感を踏まえると、次のような順序で動くのが現実的です。
- 自分の職種でAIがどう使われ始めているかを調べる(業務変革は経営課題3位のため)
- AIの基礎知識や情報の扱い方など、企業が慎重になっている領域から学ぶ
- 学んだ内容を社内の業務改善に小さく試し、実績として見せる
いきなり大きな資格取得を目指す必要はありません。企業が困っている領域から逆算して学ぶほうが、成果につながりやすいと考えられます。
社内でも社外でも通用するスキルを選ぶ
リスキリングが経営課題である以上、社内で学びを支援する制度が広がる可能性があります。同時に、AIやデジタルのスキルは転職市場でも評価されやすい領域です。
社内で必要とされ、いざというときに社外でも通用する——このどちらにも効くスキルを選ぶことが、企業データの示す方向性に沿った選択と言えます。
この記事のまとめ
パーソル総合研究所の調査は、個人が抱く「AIに仕事を奪われる」という不安とは別の景色を映し出しています。企業側は人材の確保と育成にこそ課題を感じており、リスキリングは経営課題の2位に位置づけられていました。
- 経営課題1位は人材確保(53.9%)、2位はリスキリング(45.3%)
- 賃上げ企業は73.0%まで拡大し、人材確保の姿勢が続く
- 人事部のAI日常活用は39.2%にとどまり、安全な活用スキルに余地がある
学び直しは、企業のニーズと重なる行動です。まずは自分の職種でAIがどう使われ始めているかを調べ、企業が慎重になっている「安全な活用」の領域から学び始めてみてください。気になる調査の詳細は、パーソル総合研究所の公式サイトで確認できます。
よくある質問
「人事部トレンド定量調査2026」はどんな調査ですか?
パーソル総合研究所が実施した企業の人事部門に関する定量調査です。2026年3月4日〜16日に行われ、内資系企業の1,934人が回答しました。2026年7月30日に公開されています(出典:パーソル総合研究所「人事部トレンド定量調査2026」)。
企業の経営課題で「リスキリング」は何位でしたか?
「人材育成・リスキリング・最適配置」は45.3%で経営課題の2位でした。1位は「人材の確保・採用競争への対応」(53.9%)、3位は「DX・AIを活用した業務変革・新たな価値創出」(38.2%)です(出典:同調査)。
企業の賃上げの動きはどうなっていますか?
賃上げを「引き上げ予定/引き上げ済」とする企業は、2022年の61.8%から2026年には73.0%に拡大しました。賃上げ判断で最も重視された要素は「物価動向」(29.7%)でした(出典:同調査)。
人事部門はAIを活用できているのですか?
人事部でAIを日常的に活用している企業は39.2%にとどまります。進まない理由の最多は「機密情報・個人情報の漏洩リスク」(34.8%)で、個人情報を扱う部門ならではの慎重さがうかがえます(出典:同調査)。
この調査結果は個人のキャリアにどう関係しますか?
企業がリスキリングを経営課題の上位に据えている以上、学び直しは企業のニーズと重なる行動と言えます。特にAIの安全な活用スキルは、企業側の課題が残る領域のため、身につけると社内で必要とされやすいと考えられます。
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